くまのプーさんみたいな彼に一目惚れ! 実は“モラハラ男”で出産後、シェルターへ避難
『わが子に会えない』(PHP研究所)で、離婚や別居により子どもと離れ、会えなくなってしまった男性の声を集めた西牟田靖が、その女性側の声――夫と別居して子どもと暮らす女性の声を聞くシリーズ。彼女たちは、なぜ別れを選んだのか? どんな暮らしを送り、どうやって子どもを育てているのか? 別れた夫に、子どもを会わせているのか? それとも会わせていないのか――?
第17回 寺田倫子さん(仮名・29歳)の話(前編)
「彼が『会いたい』って言ってくれれば、全然会わせます。娘は父親のことはすごく好きで、彼が抱っこしてる写真とか動画を見せるとすごく喜ぶんです。『パパ、大好き。パパに会いたいなー』みたいなことを気軽に言うんです」
家事代行業の寺田倫子さんは話す。DVシェルターに逃げた後、現在は近畿地方にある母子生活支援施設(母子施設)で暮らしている。夫のDVが理由で逃げたはずなのに、なぜ彼女は娘を会わせたいと話すのか?
■知人夫婦の紹介で出会った彼は、思いっきりタイプで一目惚れ
――まず、寺田さんご自身は、どのような家に育ったのでしょうか?
会社員の父と料理家の母、その3人兄妹の三番目(次女)として、兵庫県に生まれました。だけど私が9歳のとき両親は離婚しました。原因は父親のギャンブルです。普段は優しい人なんですが、お札を見ると人が変わっちゃうんです。会社のお金に手をつけて競馬場に向かってしまうらしくて。何回も仕事を辞めさせられ、その都度、刑務所に入りました。
――それは、さすがに離婚しますよね。
その後、母が再婚しました。自給自足生活を求めて、一家で瀬戸内海の離島に移住することになりました。私が14歳のときです。新しい父はろくに働かない。しかも毎日1時間以上は正座させられて説教されました。そういう環境に6年耐えたんですが、我慢の限界でした。20歳のとき、1人で神戸に引っ越したんです。そして飲食の仕事などをしていました。
――旦那さんとは、いつ知り合ったんですか?
神戸に住み始めて3年後だから、今から6年前です。知人夫婦に「めっちゃ落ち込んでる人がおるんやけど、一緒に飲みに行かへんか?」って言われたのがきっかけ。5歳年上の、カー用品会社の営業。出会いにはまったく期待せず、軽い気持ちで飲みに行きました。目の前に現れた彼は、物腰が柔かな、くまのプーさんみたいな、背のちっちゃい、チビデブ。思いっきりタイプだったんで、私、一目惚れしてしまいました。
――どんなことを話したんですか?
彼、奥さんに子どもを連れて出て行かれたってことで、沈んでいました。「子どもたちと離れたんは、ごっつい悲しい。そやけど会うてもしゃあない。向こうにも生活があるやろうから」と言って、浴びるように酒を飲んでいました。
――連絡先の交換はしましたか?
私が「携帯電話の番号を教えてくれへん?」と言うと「教えられる状況ちゃうねん」って断られました。それで私、彼の携帯を奪って「あんたの携帯に、うちの連絡先入れとくから」って言って、携帯番号を彼の携帯に登録して返しました。その後、私の携帯から彼の携帯に電話をかけて、ワン切りしました。そこまでやった上で翌日、メールしたら、ちゃんと返事が来ました。それからまたすぐに会って、お付き合いを始めました。
――見た目が好みだったこと以外に、彼のどこが良かったんですか?
“おなかを抱えて笑っていたい”ということを、私、人生の一番大切な要素にしてるんです。その点、彼は最高です。今まで会ってきた男性の中で一番、笑いのセンスがありましたから。会話ひとつとっても笑いを取ろうとしましたし、笑いのツボが一緒。漫才とかコントとかの番組を見て、一緒に笑ってくれたりもしました。