大地震が発生したら、ムショはどうなる? 元女囚が明かす、災害と“脱走”のこと
覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。
■非常食のカンパンで口が血だらけに
6月18日の地震、本当にびっくりしました。余震も続いていて、読者の皆様のことも心配です。私の地元もけっこう揺れましたが、家の被害などは大丈夫でした。友だちの家は食器棚の食器が全部床に、とかあちこち大変だったようです。「コンビニのトイレで用足し中やった」ちゅう友だちもいてました。
亡くなられた方もいらっしゃいますね。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
さて、地震が起こったらムショはどうなるのでしょうか?
敷地が広いし、食料や水を備蓄しているので、地元自治体などと災害協定を結ぶところも増えているようですね。避難場所にしたり、備蓄していた食料や水を分けてあげたり。ムショも地域住民からすれば「迷惑施設」やから、こういう時こそ地元に貢献せなあきません。
もっとも東日本大震災の時は、宮城刑務所の知り合いが「カン(官、施設側のこと)が勝手に食料を近所に配ってしもうて、10日くらいカンパンと水だけやった。その時だけで5キロは痩せたわ」とぼやいてましたから、災害協定も懲役(受刑者)の立場では微妙なところです。ちゅうか、そもそもカンパンは年寄りには硬すぎます。ムショちゅうか、社会全体が高齢化してるんですから、カッチカチのカンパンよりも、みんなが食べやすいものを備蓄してほしいですね。
ちなみに私は獄中(なか)で大きな地震に遭ったことはないのですが、和歌山刑務所では、9月の「防災月間」にカンパンや「ひもを引っ張ると温まるお弁当」を出されました。どっちもおいしくなくて、不評でしたね。二度と食べたないです。特にカンパンは入れ歯のオバーたちからは「硬すぎて口の中が切れて血だらけや……」と大ブーイングが起きました。
和歌山は訓練でしたが、ホンマに地震が来たら、どないなるんでしょうか? これ、先生(刑務官)に直に聞いたことがありました。「当所は『震度10』対応や。ここがつぶれる時は地球がなくなる時だから、安心しなさい」と言っていました。「ホンマかいな……」ですが、そんだけ頑丈ってことですね。読者の皆さんも務めるなら和歌山ですよ!