ジャニーズファンだけがわかる、Sexy Zone・佐藤勝利のささやかで“大きな成長”
菜々緒の美脚と回し蹴り、美しい悪魔ぶりばかりに話題が集中したドラマ『Missデビル 人事の悪魔・椿眞子』(日本テレビ系)が、6月16日に終了した。最終話は視聴率9.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録し、まずまずの結果となった。
そんな中、Sexy Zone・佐藤勝利は、「ヘタレな新入社員」役で出演。ネット上には「演技がイマイチ」「大御所に囲まれたせいで、演技が余計にヘタに見える」などという残念な感想が多数見られた。
しかし、こうした感想を見るにつけ、佐藤やSexy Zoneのファン、そして広くジャニーズを見ているファン、お茶の間で彼を見てきた人の中には「え? こんなに上手になったのに!?」と違和感を覚えた人も少なくないだろう。確かに、佐藤の演技にたどたどしさは多少あるが、真面目さ、真っすぐさとヘタレ具合は、等身大の新入社員像を十分に表現している。
何より、初出演ドラマ『ハングリー!』(フジテレビ系、2012)で放った伝説的な棒読みゼリフ「トウチャン、ヤサイドロボーガイルヨ」がネット上で話題となった頃から考えると、別人のようにナチュラルな演技だ。
初主演ドラマ『49』(日本テレビ系、13)では、交通事故で亡くなった父親の魂が入り込んでしまった男子高校生役を演じた。「父親の魂が乗り移ったことで、明るい性格の人気者に変化する」設定ながら、濃淡があまりない淡々としたセリフ回しと、高校生らしからぬ落ち着きっぷりに、“オヤジ子ども感”はどうしてもあった。しかし、そもそも「オヤジの魂が入っている」設定なのだから、これはぴったりである。
そして『99.9-刑事専門弁護士―SEASONII』(TBS系、17)では「謎の少年」として出演。重要な役どころを担ったが、登場シーンはわずかであった。
「顔面国宝」ともいわれる整った顔立ちを武器としながらも、真面目で古風で安定した性格のためか、顔・声色共に表情が乏しいのは、弱点に見えた。強い目ヂカラと美しい顔、表情の乏しさを最大限に生かすために、「セリフがあまりない殺人鬼役などをやるといいのに」などのお節介な意見が、ネット上で見られることもあった。
しかし、今作で見せた、菜々緒にビビったり翻弄されたり、恋心に浮足立ったりする表情には驚いた。「いつの間にこんな顔をするようになったのだろう」と。かつて「すかしっぺ」などとネット上で辛辣な表現をされることのあった声にも、芯ができ、表情や艶が生まれ、歌唱力も昔に比べて格段に上がっている。
演技や歌はどうしてもセンスに左右される部分が大きいので、初挑戦からうまい人というのは、ジャニーズ内にだっている。しかし、佐藤の場合、入所後、何もわからないうちにデビューが決まり、グループのセンターになり、ドラマや映画、舞台などに主演してきた。しかし、歌もダンスも演技も決して得意な方ではなかった。
そんな中、立場から生まれる責任感と、数々の経験、プライベートを含めたつらく悲しい出来事などが、かつて「美しい人形」に見えた彼の内面を豊かにさせ、表現を多彩にさせたのではないか、という気もする。
最初からうまい人のパフォーマンスよりも、不器用な人がゆっくりながらも地道に成長していく様子の方が、人の心を打つことは多々ある。もしかして「YOUは特別カッコいいよ!」と、ビジュアルをベタ褒めしたジャニー社長も、それを読んでいたのでは……と思ってしまうのは「ジャニオタ脳」だろうか。
一般的には「ヘタ」「イマイチ」と一言で片づけられてしまう佐藤の演技力。しかし、その成長ぶりは、ジャニーズファンだけがわかる密かなお楽しみとしておきたい。
(田幸和歌子)