男女がわかり合うにはどうすべき? 詩人・文月悠光と男の娘・谷琢磨が語る「セクハラ問題」
――谷さんは女装をしていて、セクハラや痴漢に遭うことはありませんか?
谷 痴漢には、ものすごく遭いますね。加害者の中には、男性だとわかっていてやっている人も多いと聞きます。女装仲間と話し合った結果、我々は少し珍しい生き物なので、性的な意味合いではなく、遊園地の着ぐるみを触る感覚で触っているのではないかという結論に至りました。
文月 えっ! それも、ある種の暴力に思えますが……。好奇心によるものですかね?
谷 好奇心はあるのだと思います。また、男性は女性に比べて、触られることに対してそこまで抵抗のない方が多いのだと思います。
文月 男性は、自分の体と性的な意味が、あまり結びついていないということですか?
谷 みんながそうとは限りませんが、触られることに関しては性的な意味合いを感じていない男性も多いと思います。だから、結局セクハラ問題も、訴えられる側に男性が多いのはそういう面があるからかと。逆のパターンで女性が男性に対してセクハラをしているというのもあるのではないでしょうか?
文月 たくさんあると思います。
谷 だけど、男性が告発する案件が少ないのは、それを不快と感じている男性が少ないのかもしれないですよね。
文月 あと、不快だと感じていても、言い出せない土壌があるのかもしれません。同世代の男性から、女性にセクハラを受けたという話を個人的に聞いたことがありました。でも、それを#MeTooできるような空気ではないですよね。
――「童貞はいじってもいい」という雰囲気もそうですよね。
文月 社会の権力構造上は、男性のほうが優位なのに、男性の身体に対して世間の扱いが雑な部分があるのかなと。そういうことを男性はどうのみ込んでいるのだろうという点は気になっています。何も感じていない、疑問に思っていない人が大半なのでしょうか。
谷 性別という意味合いで分けると、男性って何も行動しないと何も起きないんですよね。女性は男性から良くも悪くもアプローチを受けたり、女性がメイクやファッションで自分を美しく見せることで惹きつけられたりする男性もいます。でも、男性は基本すっぴんだし、女性ほど髪形やファッションのバリエーションがない。行動を起こさないと何も起こらないというのが、自分が男性の格好をしていたときの感想です。積極的な人間ではなかったので、ナンパもできないし、女性に声をかけることもなかったです。
誤解を受けるかもしれませんが、女性からはセクハラと捉えられても、男性にとっては女性へのコミュニケーションだと思ってやっていて、もしかすると本人は悪気のないパターンもあるでしょうね。
文月 それは非常に多いと思います。
谷 だから、行動を起こさないと何も起きないという悩みを抱えている男性もたくさんいます。女性の格好をするようになってから、自分は「男性」というものに縛られていたことに気づきました。