2人の息子を連れ去った夫を略取誘拐罪で刑事告訴! その後、子どもを取り戻して離婚
――連れ去ったとはいえ、実際に子どもを育てているHさん側のほうが、立場が強そうに見えますね。
だけど、私のケースは調査官が本当によく冷静に見てくださる方で、子どもたちとの面会を実現するべく、すごくうまいことやってくれました。
――有井さんが最初に審判を起こしてから、子どもと会わせてもらうまでに、どのぐらいかかったんですか?
3カ月です。審判や調停の期日はだいたい1カ月に1回なので、時間がかかるんです。その間は、義母や義兄の妻が子どもたちにずっと、ありもしない私の悪口を吹き込んでいたみたいです。「ママが包丁で刺そうとしたけど助けてあげたからね」「ママに会ったらパパに会えなくなっちゃうよ」「ママに会ったら殺される」とか。そんなことを寝る前に義母から毎晩言われていたようです。
――最初の面会は、どのようにして行われましたか?
今後も会わせていいのかを見る、試行面会というものです。裁判所の面会用の部屋で、30分だけ行われました。マジックミラー越しに、部屋の外から調査官などが様子を見ているんです。同じ部屋で、まずはHと子どもたちが過ごしていて、そこからHだけが退席して私と私の両親が入り、その後、両親が退席して、私と子どもたちだけになります。私と子どもたちだけで過ごしたのは、5分にも満たない時間でした。
――子どもたちの様子はどうでしたか?
会ったとき、長男は、私と目を合わせようとすらしませんでした。下の子は風邪じゃないのに風邪薬でも飲まされてるのか、目がとろんとしてた。普通だったら「わー、ママ!」とか言って駆け寄ってくるはずなのに。それでも、私の膝にちょこんと座ってくれました。
――やっぱり覚えててくれてるんですね。上の子も寄ってきたんですか?
いえ。下の子の様子を見て、「ママに触ったら敵になっちゃうから」って、泣きそうになりながら叫んだんです。義母たちが毎晩、“なみ=ひどい母親”というイメージを植え付けた成果ですね。長男は、片親疎外症候群(PAS)※2にかかっていたんです。
※2 PAS――子どもが片方の親(多くの場合は同居親)の影響を受けて、正当な理由なく、もう片方の親(別居親)との交流を拒絶する事態【青木聡・大正大学心理社会学部臨床心理学科教授】
――そんなことを言われて、パニックになりませんでしたか?
別居親の団体に相談に乗ってもらっていたので、気構えはできていました。だから私、「大丈夫だよ、そんなことないよ。何があっても、2人のこと大好きだからね」って優しく言えました。
その後、審判や調停を行っていく中で、月1回という面会の取り決めがなされる。有井さんは2人の息子に会うために、毎週末、義父母や元夫が住んでいる茨城県西部へ出かけるようになる。
向こうは面会させたくないから、直前で『インフルエンザにかかった』とか言いだしたりするんです。そんなの仮病に決まってます。向こうの家までは片道2時間半以上。しかも、キャンセルされることもままありました。それでも毎週行って、何回かに1回、数時間だけだけど会えたんです。
離婚調停※3が裁判へと移行していく過程で面会交流のルールが変わり、子どもたちと泊まりで会えるようになる。それは、家裁の調査官が有井さんと子どもたちの面会の必要性を調停の中で主張してくれた結果だった。義母たちが連れ去って1年。初めて1週間の面会を実施しているとき、有井さんのもとに吉報が届く。子の監護者指定が決定し、親権が有井さんに確定したのだ。
※3 調停――調停委員を間に挟み、当事者同士の話し合いによって解決を図る手続き。
義実家から裁判所の人たちや警察官が、子どもたちを強制的にうちへ連れてくるというのだけは避けたかった。家裁のほうで、そうならないよう1週間の面会中に、親権が確定するようにしてくれたんです。