2人の息子を連れ去った夫を略取誘拐罪で刑事告訴! その後、子どもを取り戻して離婚
『わが子に会えない』(PHP研究所)で、離婚や別居により子どもと離れ、会えなくなってしまった男性の声を集めた西牟田靖が、その女性側の声――夫と別居して子どもと暮らす女性の声を聞くシリーズ。彼女たちは、なぜ別れを選んだのか? どんな暮らしを送り、どうやって子どもを育てているのか? 別れた夫に、子どもを会わせているのか? それとも会わせていないのか――?
第16回 有井なみさん(仮名・30代前半)の話(後編)
アルバイト先の仲間とでき婚。しかし、夫は口だけで、育児や家事を手伝ってくれない。3年後、2人目の子が生まれるも、そんな状況は変わらず、夫婦仲は悪くなっていく。義母によるお金の無心、夫の浮気、そして義母や義兄夫婦も含めた夫側の計画的な「息子連れ去り事件」により、2人の子と離れ離れになってしまった。さらに、通帳や銀行印、マンションの権利書、車まで、夫たちに取られてしまったのだった。
■夫らを未成年者略取誘拐罪で刑事告訴
――その後の生活は、どんな感じだったんですか?
精神的にどん底で、睡眠薬や精神安定剤が欠かせませんでした。日常生活に対しても無気力になり、心にぽっかり穴があいてしまったようでした。そのとき励ましてくれたのが、担当してくれた弁護士です。相談に行ったところ、「あなたがしっかりしてないと親権は取れない」と言われたんです。私、はっとして、以後は行動を改めました。子どもたちがいつ帰ってきてもいいように、日々の生活のリズムを崩さないよう頑張ったんです。精神安定剤などの薬にしても、お医者さんにお願いして減らしていきました。
――長男は幼稚園に通っていたはずですが……。
連れ去られた次の日には、Hの実家近くの幼稚園へ入園手続きが取られていました。転園先を突き止めて、電話したら「そんな子はいませんし、知りません。もう電話しないでください」とのこと。おそらく義母が「実母に虐待を受けていました。もし実母から電話がかかってきても、子どもに取り次いだり、連絡先を教えたりしないようにしてください」と伝えたんでしょうね。
――裁判※1などはやったんですか?
子どもを返してほしいということで、家庭裁判所で審判を起こしたんです。それに加えて未成年者略取誘拐罪で刑事告訴し、警察に告訴状を受理してもらいました。
※1 審判と裁判――どちらも家裁が審理した結果を当事者に下すという共通点がある。審判は非公開で口頭弁論もないまま審判が下るが、裁判は公開されていて口頭弁論の末、判決が下るという違いがある。
――刑事告訴ということは、Hさんや義母たちは警察へ出頭させられたんですか?
そうなんです。H、義母、義兄らを告訴したので、彼らは被疑者として、取り調べを受けました。
――Hさん側は、何か申し立てていたんですか?
連れ去りの半年後、相手方から離婚調停の申立書が届きました。それと同時に夫からはよりを戻したい旨のメールと、結婚記念日のプレゼントが届きました。
――結婚記念日のプレゼントって、何が入っていたんですか?
おそろいのパジャマです。夫と私の名前が刺繍されていました。
――離婚調停の申立書と結婚記念日のプレゼントが同時に届くって、なんだか気味が悪いですね。それで、調停でHさん側はどんなことを主張してきたんですか?
「母親が子どもを殺そうとした」とか、「統合失調症で危ないから子どもに会わせられない」とか「虐待した」とか。あることないこと、すごくひどいことを書かれました。すべて義母が書いていたみたいです。