カルチャー
生きのいいオンナがまさかの再登場!

「男ナシで生きていける強い女」はゴールじゃない!? 加藤ミリヤが“女”たちを鼓舞!

2018/05/22 15:00
ミリヤがサイ女に再降臨!

 2016年、「“女子”の呪縛ワードを斬る」企画にて、電撃サイ女ファミリー入りした加藤ミリヤ(↑)ねえさん。去る3月には『I HATE YOU -EP-』、5月にはシングル「ROMANCE」を発表し、6月には20代最後のアルバム『Femme Fatale』のリリースが控えるねえさんの新作を聞きながら、編集部内も「相変わらずミリヤってる~!」と歓喜に震えていたところ、「ちょっとサイゾーウーマンさん、女性向けサイトとして“女性のエンパワーメント”に対して、どう思っているのかしら?」なんて果たし状が届きまして。私、その話を詳しく聞きに行ってまいりました!

――昨今のミリヤのテーマは「女性のエンパワーメント」のようですが、そう思ったきっかけからお聞きします。

ミリヤ 三十路を目前にしているという年齢的な考えからきているのかもしれないけど、内側から細胞がふつふつと変化している感じがするんです。新しく生まれた細胞じゃなく、私の体の中にもともとあった細胞が、いま改めて騒ぎだしている感じ。10代の頃にメラメラしていた感覚に近いのかな。その根底にあるのが、女としての強さ、女として生きていくことの意味。すごく、考えちゃう。

 最近同い年の女の子と話をする機会が増えたんですね。その中でも京都で芸妓さんをやっている親友の子がいるんですけど、「女性の多くは28~29歳までに結婚や出産を経験し、30目前に一旦、結婚ラッシュが落ち着くよね」って話になって。決して、その行為自体を咎めているわけではないんですけど、「なんなんだろう、これって?」みたいな感覚にとらわれるんです。結婚も出産も女性にとってはステージが変わるタイミングですよね。もちろん、私はまだどちらも経験していない。周りのみんなが結婚や出産という選択をしている中、私はこれからキャリアを重ねていき、何かを得て、何かを捨てていくのかな?とかも漠然と考えてる。ただ、そうであるからには、強く生きていたし、発信していきたいという気持ちが強まってきているんです。

――結婚や出産自体が、女性として“保守”に走っているとは思っていないけど、未経験のミリヤとしては、何か思うところがある、ってことですね。

ミリヤ そう。強い女性に憧れていたのは10代の頃からで、男性社会の中でも快活に意見を言い放って、大勢の人を目の前にしても怖じ気づかない女性は素敵だなって思う。04年に16歳でデビューをしたとき、日本はジャパニーズR&Bブームの真っ只中で、女性の弱さを歌うアーティストは周囲に誰もいなくて、ライブの楽屋でも男性スタッフに強くあたるアーティストばっかり(笑)。そこで「この世界では思ったことを言葉にしなくてはいけない、強くないと生き残れない!」と思ったんです。実際に、「あなたはどんなアーティストになりたい?」「あなたはどんな女性でありたい?」と問いかけたら、0.5秒で回答が戻ってくるよう“即答女子”たちが活躍していたと思うんです。もはや、質問をすべて言い終える前に、食い気味で返ってきちゃうくらい。

――すると、現代を生きる女性からは、そういった強さ、たくましさがあまり感じられないと?

ミリヤ いや、弱いとは思ってないの。ちょっと矛盾しているように聞こえるかもしれないけど、私って意外と古いタイプの人間で、男性のほうが強くて偉くて当たり前、って思っちゃってるんです。10代の頃は「男がいなくても生きていける強い女になって稼いでやる!」と思っていたけど、実際そうなれたときに、「あれ……これって私のゴールじゃないな」って感じて。もうすぐデビューしてから15年ですけど、10年目くらいまで気づかなかった。正確には、そこに到達するまで気づけなかったのかもしれない。そして、その時期まで私には“結婚”という選択肢が入ってこなかっただけなんです。今の私は、未経験のことは経験してみたいと思うから、結婚もしてみたいし、子どもも生んでみたいと思う。仮に私が結婚したら、さっき話したように、男性が強くて当たり前だから、常に夫の三歩後ろを歩くタイプになるんだと思う。

――それは世が思い描くミリヤ像からは「意外」と思われそう。

ミリヤ 私の母親は「こんなに素敵な男性と結婚して出産もできて、これぞ女の幸せ」というタイプの女性なんです。小さい頃の私は、その考えにまったく共感できなかった。ただ、デビューして10年が経過して、私が26歳のとき、「お母さんはこの年で私を生んだんだよなあ」って気持ちになって。その3年後には父が他界して、それからは女手ひとつで家庭を支えてきたんだよな、って。そこで初めて母親に対して尊敬の念が芽生えた。「私は結婚という選択をしなかったけど、働く女性としてがんばろう。どんなことにもめげずに、もっと広い意味での女性としての強さを提示していきたい」と強く思えるようになったんです。

――なるほど、ミリヤの言うエンパワーメントの全貌が見えてきました。それが新作のリード曲「I HATE YOU」のMVの世界観にもある“バブル時代”を謳歌した女性からは、そうした女の強さがうかがえると。

ミリヤ 私は88年生まれで、日本はバブル真っ只中。もちろん、なんの記憶もないけれど、「私が生まれた年の日本は、どんな感じだったんだろう?」って。その頃の女性って、すごく輝いて見えるし、女が女であることを武器にして、まったく恥じる気配もない。それこそさっき話したような、自信に満ち溢れる即答女子ばかりが闊歩しているイメージ。

――ミリヤはMVの中でバブル時代のアイドルになりきっていますが、これは確実に工藤静香オマージュであるのは間違いありません。確かに工藤静香は、名前のごとく“静か”でおしとやかなアイドルのイメージだったけど、歌う曲のタイトルは「抱いてくれたらいいのに」「くちびるから媚薬」とか、完全女を武器にしたような曲が多い印象。

ミリヤ 静香さんのほかにも、小泉今日子さんや松田聖子さんなど、当時の女性アーティストをたくさん見て、「もう、断然静香さん!」ってなりました。

――2012年のシングル「AIAIAI」のカップリングで「慟哭」(※工藤静香が93年にリリースしたシングル)をカバーしていたことは、ある意味、先見の明ですね。

ミリヤ 下がり眉、常に困った表情という共通点もありますからね(笑)。私がもしその時代にアーティストを目指していたら、絶対に静香さんに影響を受けていたんだろうな、って思います。

――すると、昨今のミリヤの「女性のエンパワーメント」を感じない女性に苦言を呈するなら?

ミリヤ ううん、逆に苦言はなくって。むしろこれまでは「ああしろ! こうしろ!」って思う気持ちがあったけど、最近は気にならなくなっちゃって(笑)。「エンジョイ……エンジョイして!」って思うようになった。例えば、今、女をアピールする武器がインスタとかだと思っている子がいたなら、それは写真同様、フィルターがかけられた状態なんですよね。これは前回のウーマンのインタビューでも話したことですけど、やっぱり生身の姿で勝負するのが大事。ただ、その意識の高さは大切だとも思うんだけど、その意識をもっと違うところで使ったほうがいいんじゃないのかな、とは感じる。私も年齢のせいか、自撮りでキメ顔を作ることに恥ずかしさを覚えてきちゃって(笑)。

――そういう思いが『I HATE YOU -EP-』に込められている?

ミリヤ 何かに対して「大っ嫌い!」っていう気持ちを元に作った作品ではなくて、レーベルの社長やスタッフ、妻帯者の奥さんの気持ちになって曲を書こうと思ったんです。奥さんって、普段から些細なことで夫に対して怒りや憎しみを覚えたりするけど、実際に旦那さんがいないと困る、考えてみれば“大事な人”っていう気持ちも同時に持っていると思うんですね。「帰りが遅い」「浮気してるかもしれない」「愛されているか不安になる」――それって、実は究極の純愛だと思いませんか? 時には嫌いになりたい=I HATE YOU!だけど、その環境を捨てられない、結果的に嫌いになれない。「I HATE YOU」と「I LOVE YOU」は紙一重であって、好きだからこその「I HATE YOU」を歌いたかった。みんな、そういう思いを抱きながら生きているんじゃないかなって。なので、曲としては「愛の奴隷」という落としどころにしたかったんです。

――これまでの話を総括すると、加藤ミリヤというアーティストが持つ「強い女性でありながら、弱さは隠さず表に出してもいいじゃない」が、うまく具現化された作品になってますね。

ミリヤ かつ、「面倒くさそうなアーティスト」ってイメージは、常に持たれていたいかな(笑)。簡単に攻略できてしまったら、面白味に欠けますからね。

 デビュー10周年で起きた変化、そしていま騒ぎだしている細胞が、デビュー15周年を迎える2019年、どういった変化をもたらすのか? 「どんな年になるかわからないけど、すごく楽しみだし、何かチャンスもあるんじゃないかなって思ってる」と話すミリヤの眼光からは、とてつもない女性のエンパワーメントが感じられたのでありました。

加藤ミリヤ(かとう・みりや)
1988年、愛知県生まれ。2004年に「Never let go/夜空」でデビュー。BUDDHA BRANDやUAなどの名作をサンプリングした楽曲で注目を集める。自身のアパレルブランド「KAWI JAMELE」のデザイナー、小説家としても活躍。

(左から)EP『I HATE YOU -EP-』(初回生産限定盤)2,370円(+税) / (通常盤)2,000円(+税)、SG「ROMANCE」(初回生産限定盤) 1,800円(+税) / (通常盤)1,204円(+税)

※6月20日にはアルバム『Femme Fatale』発売! 初回生産限定盤 4,500円(+税) / 通常盤3,056円(+税)

“MILYAH BIRTHDAY BASH LIVE 2018”
公演日時間:2018/6/22(金) 18:00 / 19:00
会場:STUIDO COAST

最終更新:2018/05/22 15:00
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