盗撮、GPS、Twitterのアカウント暴露……SNS全盛の今、風俗嬢が「怖いこと」とは?
作中、Ω子さんは「職場にも友人の理解にもとても恵まれている」としているが、それは風俗嬢として「当たり前の環境ではない」と自覚する。だからか、「こんなにきれい事ばかりのはずがない」といった声も届くという。人の捉え方は千差万別だ。離れる友達や家族もいれば、そうでないこともある。風俗で働くことにより「何が起こるのか」にまで想像力を働かせるためには、『リアル〜』は等身大で知ることができる教材にもなりそうだ。
――数字では割りきれないと思いますが、あえて比率にすると、楽しい:つらい、どうでしょうか?
Ω お客様によりけりです。いいお客様だと、楽しい7:つらい3。面倒くさいお客様は、楽しい0:つらい10。だから、トータルで5:5くらいですね。
――嫌な客、というと、作中に登場した帰宅時に待ち伏せる男が浮かびます。
Ω 私は経験はないですが、すごくきれいでサービスも素晴らしく、すぐに予約で埋まってしまう子がいるんですが、彼女は出待ちされていると聞いたことがあります。目的は、「店外デートに誘いたい」とか、「プライベートの姿が見たい」とかだと思いますが、最近はスタッフがいろいろと対策をしているようです。
――スマホの普及による盗撮被害などはいかがでしょうか?
Ω 講習時に指導されて、お客様のカバンは戸棚の戸の裏に置くようにしています。どうしても入らない大きさの場合、体から見えない死角に置いています。
――動きの怪しい客はいませんか?
Ω 一度、スーツケースを持った方がいて、いつも通り戸の裏に置こうとしたら、「いや! いいから、こっちに置いておいて」と怪しいことを言うので、そのときはスーツケースのファスナー部分が埋まるように、さりげなくバスタオルを乗せました。
――あくまでもさりげなく。
Ω 「警戒されている」と思うと、お客様も落ち着かないでしょうしね。
――機転を利かせなければならないことが、本当にたくさんあるんですね! 『リアル〜』は、面白いエピソードだけではなく、そうした数々の体験も昇華されており、「楽しそうだから」と手放しで憧れる読者の方へのブレーキにもなりそうです。
Ω そうした、読者の方に対して「ちょっと待って!」という意識を持ち出したのは、ごく最近です。描き始めた頃は、「とにかく楽しんでもらいたい」という気持ちの比重が大きかったですね。エピソードもすべて描いているわけではなく、面白くなりそうなことを取捨選択してるし、ギャグにもならない嫌な客のことは描いていません。そういうドロドロしたものは、それが得意な人が描いた方が面白いでしょうし、私は笑いながら楽しく読める漫画が好きなんですよね。誇るわけではないし、かといって卑下もしないけど、腫れ物として扱われるのは違う。だから、「こういう世界もあるんだ」「こういう人もいるんだ」とフラットに読んでいただき、楽しんでもらえたらうれしいです。
(文=有山千春)
<著者プロフィール>
Ω子/おまΩ子(おめが・こ/おまおめこ)
電子コミックサイト・めちゃコミックで『リアル風俗嬢日記』を連載中。単行本第2弾『リアル風俗嬢日記〜今日も元気にヌいてます〜』(竹書房)は、5月17日発売。