「私も脱走を考えた」元女囚が語る、愛媛の刑務所脱走事件が起こったワケ
覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。
■脱走騒ぎは少なくない
この原稿を書いている現在はまだ捕まっていないようですが、すごいですね、愛媛の大脱走事件。報道によると、国内唯一の「塀のない刑務所」である松山刑務所の大井造船作業場(今治市)で4月8日夜に平尾龍磨受刑者が脱走、13日になっても行方がわかっていないそうです。
この作業場は、初犯でまじめに受刑している「模範的な」懲役(受刑者)が全国から集められている、レアなモデルケースのムショです。もちろん「暴力団員」はいてませんよ。でも作業場には塀も鉄格子もなく、鍵も内側から開くので、実は脱走騒ぎは少なくないんですね。
今回はなかなか捕まらないので、「脱走犯が何をするかわからないからコワい」ちゅう不安以上に、「模範囚なのになんで脱走?」とか、クルマを盗んでおいて「車をお借りします。一切傷つけません」とかメモを残す律義さみたいなところに注目が集まってる気がします。
ちなみにいわゆる「模範囚」とは、実は法務省の定義ではないのです。法律的には「優遇区分」といいます。この区分は、法務省の公式サイトでは「まじめに受刑生活を行っている受刑者により良い待遇を与える」もので、第1類から第5類まで5段階になっています。最高ランクが第1類で、手紙の発信が月10通とか認められてCDプレイヤーなんかも使えるそうですが、そんな人は見たことないですね。また一度も懲罰を受けたことがないのも条件で、そういう人も珍しいですよ。
逃げている平尾受刑者も模範囚でしょうが、逃げるなんて……何があったんでしょうね? 居ても立ってもいられない状況があったのだと思います。