オンナ万引きGメン、初日からカップ酒ドロボー捕捉! 保安員のセンスがあるのは20人に1人?
前回、ベテラン保安員について現場勤務をするインターン研修について書きましたが、その後、2回ほど同様の研修を実施してもらい、先輩の挙げる万引き犯を3人ほど見ることができました。そこで、万引きにつながる不審な挙動や万引きする人特有の雰囲気みたいなものが、なんとなくわかったように思えます。
<オンナ万引きGメン日誌バックナンバー>
中年男性が盗った――! 恐怖と興奮に震えた“初現場の思い出”
保安員になって早10年の私、「万引きGメンのなり方」教えます!
そうして、いよいよ迎えた独り立ちの日。私ひとりで万引き犯を見つけることができるのだろうか、凶暴な万引き犯に遭遇したらどうしようかと、不安な気持ちを抱えて現場に向かいました。入館手続きを終え、店長さんに挨拶を済ませたあと、所属する保安会社の本部に上番(今から勤務に就きますという報告)を入れて、前日の捕捉実績と現場までの交通費を報告します。最後に、本日の指令を受け取って勤務開始です。
「独り立ちおめでとう。無理せず、間違いのない1日にしてください」
保安デビューの現場は、東京の外れにある中規模スーパーK。ワンフロアの店内は、ほぼ食料品で埋め尽くされており、店内は冷蔵庫の中にいるような寒さです。服装の選択を誤ったため寒さにやられてしまい、勤務に集中できずにいましたが、しばらく巡回していると、酒売場に佇むホームレス風のおじいさんが気になりました。飢えたハイエナのような怖い眼で、棚に並ぶカップ酒を睨んでいたのです。
「万引きする人は、皆、怖い目をしている」
「口紅やガム、カップ酒、おにぎりなど、手の中に納まるサイズの商品は盗まれやすい」
研修時に教わった注意すべき不審者の条件が全て合致しているような状況を前にした私は、見た目の雰囲気からもお金を持っているとは思えなかったこともあって、棚の陰から、おじいさんの行動を見守ることにしました。
(やっぱり!)
それからまもなく、左右に視線を送りながら棚に手を伸ばしたおじいさんは、カップ酒を鷲つかみにすると、ダイレクトに上着のポケットの中に隠しました。高鳴る鼓動に耐え、1人で声をかけるべく追尾しますが、どうしても怖くて勇気が出ません。私の追尾に気付いていないおじいさんは、レジには目もくれず、足早に出口へと向かっていきます。そうこうしているうちに、おじいさんは店の外に出てしまい、出口の前にあるベンチに座り盗んだカップ酒をあけて飲み始めてしまいました。
(早く声をかけなければ証拠がなくなってしまう。でも、やっぱり怖い……)
店の出口付近で葛藤しながら、ガラス越しにおじいさんを見つめていると、この店の店長さんがタイミングよく私の前を通り過ぎました。そっと店長を呼び止めて、一緒に声をかけてくれるよう耳元で囁きます。
「あの、お客さ……」
私たちに声をかけられると同時に、おじいさんは歩いて逃走を図りましたが、すぐに転んでしまい店長に取り押さえられました。そこに、爪先がワニの口のように開いている汚い革靴が落ちていたことを、いまも強烈に覚えています。