大人気の「刺すヒアルロン酸パッチ」は効果的なのか? Dr.高須幹弥がジャッジ!
【第59回】「高須幹弥センセイ、パッチと注射で効果はどのくらい違いますか?」
手軽にできるアンチエイジングとして、美容整形で人気のヒアルロン酸注射。ただ最近は、美容整形外科へ行かなくても、自宅でヒアルロン酸を注入できるという「刺すヒアルロン酸パッチ」なるものが注目を集めている。ヒアルロン酸の針がついたパッチを気になる部分に貼るだけで、数時間後にはふっくらして、シワやほうれい線が薄くなるそうだ。美容女子のあいだでは“ヒアルロン酸注射のお手軽バージョン”という印象のようだが、美容整形外科で受けるヒアルロン酸注射と同じなのだろうか? 高須クリニック名古屋院院長の高須幹弥先生、「刺すヒアルロン酸パッチ」について教えて下さい!
■パッチのヒアルロン酸は半日ほどで流れ落ちる
人間の皮膚は、表皮、真皮、皮下組織の3層構造になっているのですが、美容整形外科で行うヒアルロン酸注射は、真皮や皮下組織の脂肪層にヒアルロン酸を注入することで、しっかりとしたハリを出します。効果の持続期間は、ヒアルロン酸の量や種類、注入の仕方にもよりますが、短くて3カ月、長ければ5年ほど残るものもあります。
「刺すヒアルロン酸パッチ」について調べてみたところ、ヒアルロン酸の針の長さは0.2ミリくらいとのこと。表皮の厚みは約0.2〜0.3ミリなので、パッチでヒアルロン酸が浸透するのは、表皮にある角質層になるでしょう。角質層は、繰り返される皮膚の新陳代謝で剥がれ落ちる部分。いってみれば、パッチは死んだ細胞の中にヒアルロン酸を注入するようなものです。そのため、ヒアルロン酸が角質層内に残っている間は、ヒアルロン酸の保湿効果でそれなりにみずみずしさが得られると思いますが、すぐに流れ落ち、元の状態に戻ってしまうと考えられます。持続期間は、持って半日ほどではないでしょうか? もし美容整形のように、ある程度の期間、効果を持続させたいのであれば、おすすめはしませんが、毎日パッチを貼るなど、効果が途切れないような使用方法が必要になるかもしれません。
実際、「刺すヒアルロン酸パッチ」の広告や商品サイトなどを見ていると、「効果がある」ということだけで、持続期間については明確に触れていないんですよね。その効果に関しても、「医学雑誌に実験結果が掲載されている」と信頼性をうたっている商品があるものの、メーカーがお金を払って研究や論文作成、掲載などを依頼しているケースも考えられるので、よほど権威ある医学雑誌でない限り、信ぴょう性に値するとは言い切れません。これらのことを納得した上で使うならかまいませんが、僕はおすすめしませんね。
■パッチの効果は信じる気持ち次第!?
そもそも、美容関連は特に、リスクのあるもののほうが効果も高めなことがほとんどです。逆に、医師の診察が必要なく、誰でも簡単に買えるものはローリスクなぶんローリターン。「刺すヒアルロン酸パッチ」も、薬液が体内に入ることでアレルギー反応を起こしたり、パッチや針で皮膚が腫れたりする人がいるかもしれないので、100%安全ということではありませんが、リスクが生じる確率は一般的な化粧品と同じように低いでしょう。その半面、顔の上をコロコロ転がすローラーや、2万円ほどで手に入る美顔器などと同じで、それほど効果が得られるものではないと感じます。
ただ、女性は「効果がありそう」という気分的なものを重視する傾向があるので、パワーストーンを買った後にいいことがあると「この石のおかげだ!」と思うのと似たような感じで、信じることで効果を実感できる人もいるかもしれませんね(笑)。
高須幹弥(たかす・みきや)
美容外科「高須クリニック」名古屋院・院長。オールマイティーに美容外科治療を担当し、全国から患者が集まる。美容整形について真摯につづられたブログが好評。
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