ヅカオタ女医の“偏愛”宝塚ソング「根は体育会系なのに、はかない世界を歌うジェンヌ」
また一方で、そうしたはかなげな曲調ではあるものの、これを歌っているのが、実際には根が体育会系なタカラジェンヌたち……というのもポイントです。とあるスターさんは、1回目の宝塚音楽学校の受験に失敗したその日、東京に戻ったその足でバレエ教室に向かい、次の年の受験に向けてのレッスンを始めたとか。ネバーギブアップ、努力を惜しまない姿勢がすばらしいです。
一方のwojoが受けたのは、どう見ても宝塚音楽学校よりはるかに倍率が低い専門医試験(宝塚音楽学校の倍率は例年20倍以上、対して専門医試験は約1.3倍)。しかし恥ずかしながらわたくしwojoも、2回目の受験が失敗とわかったその日から、そのスターさんに倣い、翌年の試験に向けての勉強を始めたのです。そして「夢人」を聞くたびに、優しく、そして同時に強くたくましい体育会系の空気に背中を押され、無事合格を勝ち取ったのです。本当に宝塚ソングって、その背景を思えば思うほど、得るものもまた多い、そのような深い楽曲だらけなのです。
この「夢人」、約20年の時を経た99年の宙組公演、花組公演の『ザ・レビュー’99』において、「ファンタジー-夢人-」のシーンが再現された際、それぞれ姿月あさとさま、愛華みれさまによって再び歌われます。また、宝塚100周年を記念して製作された『Congratulations!! ‐TAKARAZUKA 100th Anniversary Disc‐』においても、凰稀かなめさまによって収録されております。そしてなんと宝塚外でも、「君は薔薇より美しい」などのヒット曲で知られるあの布施明さまが、78年に発表された名盤『ラブ・ドリームス・アンド・ティアーズ』の中で歌っておられるのです!
宝塚ソングの中でも独特な個性で際立つ「夢人」。最近はなかなか舞台上で耳にする機会はないのですが、聞く者を癒やしつつも力づけてくれる名曲として、そろそろショーなどで披露していただければと、わたくしwojo、密かに願っている春の日なのです。
<近況>
私の指導のもと宝塚ファンとして急成長中の女医さんが先日、初めてオーストリアとフランスを旅行したそうです。行き先は、ウイーンのシェーンブルン宮殿(宝塚的には『エリザベート』や『ベルサイユのばら』)、バートイシュル(『エリザベート』)、フランスのベルサイユ宮殿(『ベルサイユのばら』)、パリのサン・ドニ教会(『1789』)。ちょいちょいマニアックな場所が含まれているのが、さすが宝塚ファンらしいチョイス。
個人旅行で行ったため手配がそれなりに大変だったそうですが、彼女いわく「宝塚ファンの行きたいところを組み合わせたツアーがあればいいのに……」とのこと。確かに、劇場にチラシを置けばお客さんが殺到するかもですね!
今回の曲:「夢人」(77年初演)
初期宝塚のエポックメーキング的なレビュー『モン・パリ』上演50周年を記念し、『白井鐵造監修 モン・パリ誕生50年 グランド・カーニバル』として77年に雪組、花組で上演された『ザ・レビュー』の第3部『ファンタジー‐夢人‐』の中で歌われた楽曲。宝塚歌劇団の中でも独創的なショー作家として名をはせる草野旦氏が構成・演出・作詞を担当した。トップスターが鳥を抱えながら銀橋を渡る印象的なシーンで歌われる。99年に宙組、花組で上演された『ザ・レビュー』においても、鳥かごを抱えたトップスターによって歌われた。