ヅカオタ女医の“偏愛”宝塚ソング「根は体育会系なのに、はかない世界を歌うジェンヌ」
はじめまして、宝塚ファンの女医、wojoです。このほど「おたぽる」さんから「サイゾーウーマン」さんに場を移させていただきました。よろしくお願いいたします。
■wojo(ヲジョ)
都内某病院勤務のアラフォー女医。宝塚ファン歴20年で、これまでに宝塚に注いだ“愛”の総額は1000万円以上。医者としての担当は内科、宝塚の方の担当は月組。
さて突然ですが、医療業界の近年の流れとして、医者は自分の専門分野の専門医の資格を取ってようやく一人前……という流れがございます。そして私事ですが、わたくしwojo、自分の専門分野の専門医試験に2年連続で撃沈。毎年落ちていました。おそらく合格率は80%以上の試験で、10人受ければ8~9人は受かるもの。それを律儀に、2年連続で1~2人の不合格者の中に入ってしまったのでした。
が! 昨年末、3回目にしてめでたく合格しました。いま、ようやく深呼吸して暮らせる日々を過ごせております。落ち続けている2年間は、生きた心地がしない暗黒の毎日でして、「医者やめちまえ!」と言われているような(あ、実際には言われませんでしたけれども……)、あるいは「宝塚ばかり見ているから落ちるんだよ!」と言われているような(あ、これは宝塚ファンの友人から実際に言われました)、まあとにかくもつらい2年間だったわけであります。
そんなつらい日々のココロの隙間にすっと入ってきたのが、今回ご紹介する「夢人」です。
「宝塚のモーツアルト」の名曲
1977年における宝塚のショー『ザ・レビュー』は3部構成で、そのうちの第3部が『ファンタジー-夢人-』というタイトルの、17分にわたるストーリー・バレエでした。そして今回ご紹介するこの「夢人」という曲は、このストーリー・バレエの冒頭でトップスターによって歌われた曲なのです。構成・演出は、もともと画家志望でおられた、現・宝塚歌劇団理事でもある演出家の草野旦氏。この作品で同氏は、文化庁芸術祭優秀賞を受賞しておられます。「夢人」の作詞を手がけたのも、この草野氏、そして作曲は、「宝塚のモーツアルト」こと故・寺田瀧雄氏です。
夜だから
夢見ることにあこがれて
目を閉じれば
なおさら何も
みえなくなる
闇の世界に
おおわれて
一人ぼっちになっていく
とっても寂しげなメロディで、鳥を抱えたトップスター(77年の初演時、雪組公演においては汀夏子さま、花組公演においては安奈淳さま)が歌いながら銀橋(エプロンステージ)を渡っていきます。そして最終部、曲調が変わり……
夢を作ってみませんか
花少々と星三つ
月に輝く粉雪小雪
それだけあれば十分です
作った夢は消えません
作った夢は消えません
宝塚の「花」「月」「雪」「星」各組の名前が入った歌詞にドキッとします【註:この曲が作られた77年時点では、現在5組目として存在する「宙」組はありませんでした】。宝塚を見ていれば闇には陥らない、宝塚で消えない夢を見続けてみませんか……と耳元でささやかれているような、そんな感じ。ちょっとはかなげな、危なげな感じもございます。wojoは暗黒の2年間、気持ちが落ちるだけ落ちた時には、この曲を聞き、闇の世界から這い上がり、目指すべき夢をつくりあげていかなければと(もちろん宝塚を見てパワーをもらいつつ)、自分自身の気持ちをちょっとでもアゲようとしていました。そんな時「夢人」の寂し気なメロディが、弱った自分を優しく力づけてくれていた、とでも申せましょうか。