羽生結弦には、なぜ“くまのプーさん”が必要なのか? “ぬいぐるみを溺愛する大人”の心理
――ジャニーズやK‐POPファンの中には、ぬいぐるみをコンサート会場に持ち込み、抱きしめながら鑑賞している人がいます。ぬいぐるみに衣装のコスプレをさせたり、ファン活動の現場以外にも連れていくという人もいます。
唐沢 あこがれの人を常に身近に感じていたいからでしょう。ファン活動とは関係のないシーンでも、ぬいぐるみを手にしていることで、“彼のファンである自分”を確認でき、いつでも相手のことを考えている状態になることができますからね。気持ち的には、好きなアイドルの写真を持ち歩くのと同じですが、ぬいぐるみの方が抱きしめられるなどの接触感を得やすいので、より心理的な近さを感じることができるのかもしれません。また、コンサートでぬいぐるみを持っているほかの人を見ると、お互いファンであることが一目でわかり連帯感が増したり、自分の好きなアイドルが、これだけ多くの人に支持されていることを確認できるということもあるでしょう。
――ジャニーズファンには、ディズニーキャラクターのダッフィーやシェリーメイ、K‐POPファンにはLINEキャラクターのブラウンのぬいぐるみが人気といった傾向もあります。
唐沢 ファン同士の仲間意識が芽生えるのかもしれません。好きなアイドルのシンボルとして同じキャラクターを共有することで、先ほど述べたようなファン同士の連帯感を得られる効果が大きいのではと思います。
――その一方で、ぬいぐるみを連れているファンを、「いい歳して痛い」と嫌悪感を持って見ているファンもいます。同じアイドルを好きなのに、なぜそのような感情が生まれてしまうのでしょうか?
唐沢 多くの人にとってのアイドルである存在が、あたかもそのファン一人に独占されているかのように感じてしまうからではないでしょうか。 アイドルは、舞台上や画面の中にいる遠い存在で、“1対多”の関係。にもかかわらず、ぬいぐるみを持つファンが、アイドルのシンボルを抱きしめるなどして強いつながりを見せると、そのようなことをしていない人は、「アナタだけのアイドルじゃない」「抱きしめて独占しないでほしい」と感じて、心がザワザワするのかもしれません。
――アイドルを独占しようとしているファンのメンタリティを「痛い」と見る人もいるのかもしれません。
唐沢 嫌悪する人が、同じようにぬいぐるみを持たないのは、そういったファン同士の連帯感に入るのがイヤで、心理的に距離を置いているからとも考えられます。