『BG』俳優・木村拓哉が、中年男性の“弱さ”を演じられないいくつかの理由
『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)は、木村拓哉が演じるボディーガード・島崎章が主人公のドラマだ。毎回、島崎たちボディーガードが、政治家や芸能人といったVIP待遇の有名人の身辺警護を担当する一話完結モノで、エンターテインメント作品としてとても見やすい作品となっている。
第7話では、離婚した島崎の妻・小田切仁美が登場した。演じたのは1996年の恋愛ドラマ『ロングバケーション』(フジテレビ系)で木村と共演した山口智子だったことが話題となった。22年ぶりの共演でも、2人のやりとりは軽妙で息が合っており、これだけ時間がたち、外見は多少老けたものの、2人は当時とあまり変わらず、しかしそれらを素直に称賛する気持ちよりも、良くも悪くも時間が止まっているような違和感を覚えた。
テレビ朝日系の連続ドラマに木村拓哉が出演するのは、今回で2作目だ。前作『アイムホーム』(2015)では、過去の記憶を失い、妻と子どもが“仮面”をかぶっているように見えて苦悩する父親を演じた。テレビ朝日系ドラマにおける、木村の起用方法が面白いのは、青年期が終わり40代という中年になった木村を見せようとしているところだろう。つまり、ヒーローではなく等身大の人間を演じさせようとしている。強さだけでなく、人間としての弱さや情けなさも盛り込みたいのだろう。今作『BG』の島崎も、シングルファーザーで、過去に仕事で失敗したことで交通警備員に降格したという、弱さを打ち出した導入部となっていた。
脚本は『昼顔~平日午前3時の恋人たち』(フジテレビ系)などで知られる井上由美子。木村の作品では『GOOD LUCK!!』(TBS系)と『エンジン』(フジテレビ系)という人気作を手がけているが、今作では、40代の一児の父親という中年男性を描こうという挑戦が随所に見受けられる。
劇中では、依頼人に文句を言われても我慢して彼らを守るボディーガードの苦しさが描かれている。毎回、木村は罵声を浴びせられ、殴られてボロボロだ。そんなボロボロの島崎を通して等身大の中年男性の弱さを描きたいのだろうが、それはあまりうまくいっていない。