青木さやか、離婚理由は“経済格差”発言――男女をめぐる「昭和的刷り込み」の根強さ
羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「私がほとんど出していた」青木さやか
『サンデー・ジャポン』(TBS系、2月25日)
若い読者の方は驚かれるかもしれないが、昭和という時代には、“男女が食事をしたら、男性が支払うもの”という暗黙の了解があった。もちろん全てのカップルがそうだったとは言わないが(事実、田辺聖子の小説には、ワリカンを好む女性がたびたび登場する)、なぜ男性がカネを払うのが“当たり前”だったかというと、あの時代は、総じて男性の方が収入が高く、女性にカネを出させるのは、「男の沽券に関わる」と考えられていたからである。
『ルンルンを買っておうちに帰ろう』(角川文庫)で大ヒットを飛ばした林真理子の80年代のエッセイを読むと、サラリーマン男性とデートした際、「フツウのサラリーマンにはこの店の支払いはキツいだろう」とテーブルの下から男性にお金を渡す描写にたびたび遭遇する。人目のあるところで、女性が支払いをすることは、男性に対する侮辱と考えられていたので、高収入の女性には、このような“気配り”が必要だったわけだ。“男性をしのいではいけない”というのが、昭和の礼儀だった。
しかし、昭和は終わり、バブルは弾け、“失われた20年”と呼ばれる経済停滞期がやって来る。一時的に景気が上向くこともあったが、労働者の賃金が上がっておらず、食べるために男女問わず働かなければならない世の中になった。そして、まもなくそんな平成も終わろうとしている。にもかかわらず、女性向けメディアは例えば「日経新聞を読むような小難しいことを好む女子はモテない」といった具合に、いまだに“男性をしのいではいけない”という昭和スタイルを発信し続けているのはなぜなのだろう。これは、“男性より高収入なのは、悪いこと”という考えにつながっていくのではないだろうか。
例えば、2012年にダンサーとの離婚を発表した、お笑い芸人・青木さやか。彼女は、『サンデー・ジャポン』(TBS系)出演時、離婚の理由をたずねられ、「うまく説明できない」と前置きしつつ、「収入は私の方が多かった。私がほとんど出していた。それを彼に言えなかった。彼のプライドもあるし」と、自分が高収入であるがゆえに、元夫を傷つけ、そこから軋轢が生じたと取れる説明をしていた。
離婚の原因はさておき(テレビで本当のことを言えるとは思えない)、高収入女性(もしくは資産家家庭出身の女性)が男性に敬遠されるかというと、私にはそうは思えないのだ。