元公安が語る『BG~身辺警護人~』――木村拓哉は“敏腕ボディーガード”に向いている!?
――第3話では、身辺警護課に緊急の依頼が舞い込み、人気タレント・かのん(三吉彩花)に支給する現金「1億円」の警護を島崎たちが任されていました。“人物以外”の警護をする依頼は現実にもあるのでしょうか。
北芝 現金輸送の警護などは割とあります。セコムやALSOK(綜合警備保障)といった警備会社を見ていただいてもわかるように、現金輸送は通常業務でやっていますので、ノウハウもあり、そこまで困難な任務というわけでもありません。
――同話には、渓谷の上にかかる高所の吊橋から、手錠を命綱にしてぶら下がるといったアクションシーンもありました。民間のボディーガードがこのような危険な任務を任されるものなのでしょうか。
北芝 そのような、あからさまに命の危険がある依頼は、警備会社が審査の段階ではねてしまいますのでボディーガードが任務に就くことはありません。やはりビジネスですし、日本では特に安全面が重視されていています。もし命を落としたりして、遺族が会社側を裁判で訴えた場合、十中八九会社側が負けてしまいますから。
ちなみに第3話は、実はかのんが誘拐されていた(その後、狂言誘拐だと判明)という展開でした。誘拐だとわかった場面では、島崎らが警察に通報するかどうかで揉めたものの、結果危険性が高いという理由から、通報することに。しかし逆に言えば、小さな犯罪(例えば、依頼人が運転中に信号無視をしたなど)を犯しても、危険性が高くなく、証拠が残らず、しかも即座に逮捕されるような案件でない場合、ボディーガードは見て見ぬふりをすることもあります。
――そのほか、北芝さんが劇中で“ここはリアリティがある”と感じた点をお教えください。
北芝 島崎さんは、ボディーガードの仕事を辞めた後、警備員に転職して6年働き、配置転換によって再びボディーガードになるという設定ですが、とてもリアルだなと思いました。私もそうですが、頼まれれば警備員もしますし、ボディーガードの仕事があるときはボディーガードをしています。それを人に話しても、「ボディーガードが警備員もするの?」と、信じてくれないんですよ。なので、この設定が視聴者に受け入れられて、好反応だったのはうれしかったですし、島崎さんに親近感が沸きましたね。
――逆に、ここは現実と違うなと思った箇所を教えてください。
北芝 「ボディーガードの世界では、失敗を犯した者は現場には戻れません」といったセリフがありましたが、そんなことは現実にはありません。島崎さんは、過去に子どもの命を守るために、クライアントから目を離してケガをさせてしまったという過去があり、それが一度ボディーガードを辞める原因となったわけですが、緊急性のある正当な理由によって起こったことですから、それでボディーガードとして働けなくなることはないです。
それとは別に、現実のボディーガード業界は人材難ということもあります。言い方は悪いかもしれませんが、クライアントが死んだわけでもありませんから、その程度の理由で会社も解雇することはあり得ませんね。