羽生結弦の強さは文字にも表れていた! 冷静沈着な情熱家の素顔を、プロ筆跡鑑定人が解説
牧野 さらに、羽生さんは体の線が細いですが、文字は横幅が広めで安定感があります。これは、体力があり、体を動かすことをいとわない、あるいはそのように努力してきたことを表しているのです。
――王子様のような顔立ちやスタイルですが、しっかり体育会系でもあるということですね。
牧野 ほかにもハネが強く、文字を直線的に書く人は、「最短距離で目標を達成する」タイプですので、無駄を嫌い、合理的に行動します。
――お騒がせ発言は多いけれど、何かしたのかというとあまり思い出せない泰葉さんは、かなり「ハネない」文字でした。「ハネ」は実行力を表すんですね。
牧野 はい。彼の精神面の強さやストイックな面は、ここからきていると思われます。さらに、横線の間隔がそろっていること(例えば「表」の字)は、演技の緻密さにも関わってきます。これは細かなところによく気がつき、何をやらせても正確で緻密な仕事ができることを表しています。また、物事が整然としている状態を好みます。演技においてもその面が生かされ、人の気付かないところに気付くことができ、それを良く観察して自分のものにすることができるのでしょう。
そして、羽生さんの大きな特徴として、文字と文字の間隔が広いですよね。これは「落ち着き、何があってもあわてないこと、マイペースであること」の表れです。のんびり屋の人に多い書き方ですが、彼の場合は、自分の時間の流れを崩さない、これを徹底しているのでしょう。
――アスリートには必須の気質ですね。
牧野 あと、へんとつくりの間の間隔が狭い文字「結」と、広い文字「情」が混在しています。これは職人気質で妥協しない頑固な面と、自分と人との違いを受け入れるおおらかな面を表しています。おそらく、羽生さんは「自分はこうだけども、それを周囲には強制しない社会性の豊かさ」があるのでしょう。
今まで取り上げたのはフィギュアスケーターとしての羽生さんの筆跡です。ほかの資料で見た、彼のプライベートな筆跡は、角の丸い文字があちこちに見受けられます。また、左右の払いも大きめになっています。これらは、真面目な中にも適度に表れるユーモアや茶目っ気、融通性、柔軟性を表しています。
――リンクの外での「かわいい」感じとつながりますね。
牧野 リンクの上では有り余るほどの表現力で私たちを魅了してくれますが、プライベートでは感情を素直に出すことが少し苦手のようです。また、そんなシャイなところが、ファンにとってはたまらなくけなげに映るのでしょう。人よりも多く情報を受け取ることのできる繊細さと緻密さを持ち、それを形にする冷静な分析力、身につける努力をいとわない羽生さんは、間違いなくこれからも伝説を作り続けると思います。
(石徹白未亜)
牧野秀美
筆跡鑑定人。筆跡アドバイザーマスター。筆跡心理学をもとにした鑑定と診断を行う。著書に『自分のイヤなところは直る! ~名前を書くだけ~』(東邦出版)
・ほっかいどう筆跡鑑定研究所