SNSで大拡散される“行方不明者”捜索投稿の是非――「慎重に」とプロが警鐘鳴らすワケ
――「知り合いが行方不明になった」という話はあまり聞いたことがないので、年間10万人以上が行方不明になっているというのはかなり驚きです。
田原 言ってみれば、駅や河川敷などでよく見かけるホームレスの方々も、ほとんどが行方不明者ですからね。これまで私は、社会福祉法人の業務にたずさわるなどして、3,000人以上のホームレスと話をしましたが、家族が状況を承知しているという人は1~2人ほど。ほかは家族に知られないまま、ホームレス生活を送っているんです。それだけ皆さんの身近なところにも、行方不明の当事者がいるということです。
――行方不明者数が減らないのはなぜですか?
田原 100人いれば100通りの事情がありますが、家族が捜しているのをわかっていてもホームレス生活を続けている人が少なくないからでしょう。ホームレスは3日やるとやめられなくなるんですよ。自立支援団体やボランティアなどによる食事提供や就職支援、さらには生活保護の受給などで、働かなくても日々の生活に困らない環境に身を置ける。その上、税金の支払いや家族関係などのしがらみもなく、自由でいられるので、一度その生活を知ってしまうとなかなか抜け出せなくなるようです。
――警察に届け出ていれば、ホームレスであっても警察官が見つけ出したりはしないのでしょうか?
田原 警察に行方不明者届を出すと、詳細な身体的特徴を聞かれます。そのため、家族は「見つけてくれそう」と安心してしまうのですが、実際には、“身元不明の遺体が発見されたときに照合するため”に聞いているんです。成人で事件性のない行方不明者の場合は、届を受理してデータベースに入力するだけで、積極的に捜索するわけではありません。「職務質問をして照合したら、行方不明届が出ていた」などのケースであれば、帰宅を促したり、その場で家族へ連絡して直接話せるようにしたりすることはあるものの、どこまで介入するかは警察官次第。もし発見した行方不明者を無理やり警察署へ連れ帰ったり、帰宅を強要したりすると、自由権の侵害にあたってしまうため、そこまではできないんです。ホームレス生活も、他人の権利や自由を侵害していなければ、自由権が認められますからね。
――警察に届け出さえすれば、捜してくれるものだと思っていました。ただ待っているだけではダメということでしょうか。
田原 はい。なので、警察に届を出すことは大切ですが、家族も積極的に捜索をしなければ、発見率を上げることはできません。