カルチャー
「日本行方不明者捜索・地域安全支援協会」理事長・田原弘氏インタビュー【前編】

SNSで大拡散される“行方不明者”捜索投稿の是非――「慎重に」とプロが警鐘鳴らすワケ

2018/02/21 18:00
Photo by Photocapy from AC

 最近、TwitterやFacebookなどで頻繁に見かけるようになった、個人投稿の「行方不明者捜索願」。「拡散希望」のハッシュタグからは、「一刻も早く見つけたい」という、捜索側の切なる思いが伝わってくる。こういった投稿が増えていることに対し、「日本にはこんなにも日常的に行方不明者が出ているのか」と驚きの声も上がっているが、警察庁発表の「平成28年における行方不明者の状況」によると、日本での行方不明者数は、平成18年以降8万人台でほぼ横ばい、平成26~28年は増加傾向にあるとのこと。

 今回は、行方不明者の捜索を支援する「特定非営利活動法人 日本行方不明者捜索・地域安全支援協会(MPS)」の理事長・田原弘氏に、日本の行方不明者の実態についてインタビューを行い、SNSなどでの捜索願投稿の是非に関しても話を聞いた。

 カウントされない潜在行方不明者

――警察庁の発表では、ここ何年かは、毎年8万人の行方不明者が出ているといいますが、この数字をどのようにご覧になりますか?

田原弘氏(以下、田原) 警察庁発表の数字は、警察に届出された「行方不明者届」が元になっています。そのため、届出されていない行方不明者を含めれば、実際は1.5倍ほどの12~13万人くらいになると思われます。最近、もっとも多いのは、認知症による高齢者の行方不明です。また、若者では、パチンコなどのギャンブルにのめり込んでサラ金での借金がかさむなど、経済的に困窮して失踪するケースが多いですね。

――突然家族がいなくなったら、パニックに陥ると思うのですが、警察に届け出ないケースがあるのはなぜですか?

田原 若者の場合は、離れて暮らす家族が気づいていないことも多々あります。数カ月分の学費や家賃の督促がきて、初めて失踪に気づいたという親御さんも少なくありません。特に近年は、携帯電話の普及により、1人暮らしの家に固定電話を引かなくなったため、失踪に気づくのが遅れるパターンもあります。「大学からこんな知らせが来た」と親が子どもに携帯で伝え、「払い忘れていた。すぐに払う」と言われ、それを信じていると、さらに督促が来る。これはおかしいと思って、子どもの住むアパートに行ってみると、もぬけの殻だったというケースです。

 高齢者の場合、一昔前は身内に認知症患者がいることを恥ずかしく感じている人が多く、届を出せずにいた。警察を介することで近所に知られてしまうことを懸念して、内々で捜すケースが多く見受けられたんです。ただ、最近は世間の認知症への理解が深まり、SNSなどで認知症の家族の捜索願を目にする機会も珍しくなくなったことから、警察へ届け出る家族が増えています。平成26年から増加傾向にあるのも、そのためだと思います。

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