「最後の不妊治療が失敗してよかった」漫画家・古泉智浩が語る、養子を育てる親のホンネ
血縁関係のない子を6歳未満で自分の籍に入れ、法的に実子と同じ扱いとする「特別養子縁組」。不妊治療を続けたものの、失敗を重ねた末に治療をやめた漫画家の古泉智浩さんは、里子の男児「うーちゃん」に特別養子縁組の手続きを行った模様を自身のコミックエッセイ『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました』(イースト・プレス)に綴っています。今回は、古泉さんと交友があり、現在2歳である実子の男児を育児中のエッセイスト・しまおまほさんとの対談を企画。里子と実子では育て方が違うのか、不妊治療への考え、里子や養子縁組の制度について、お互いの子育てをもとに語ってもらいました。
■最初は里子に抵抗があったが、子どもがいないことに耐えられなくなった
――今まで身近に、里子を育てた方はいましたか?
古泉智浩さん(以下、古泉) 僕は、『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました』にも登場しているAさん。15年くらい前からの付き合いです。5歳の時にAさんが引き取ったので、お子さんは今年成人しました。
しまおまほさん(以下、しまお) 私の周りには里子を受け入れたり養子縁組をした人はいませんが、親戚や友達で不妊治療をしていた人はいます。それで、授かった人も授からなかった人もいます。
――古泉さんは、血のつながっていない子どもを育てることに、抵抗はありませんでしたか?
古泉 最初は抵抗があったのですが、なかなか子どもができないのに耐えられなくなってしまって……。
しまお 古泉さん、ずっと、いろんな人に「(奥さんの代わりに)産んでくれ」っておっしゃってましたもんね。そう言われて産む人はいないと思うけど(笑)。
古泉 そう、「(子どもを)産んでくれるなら誰でもいい!」って。でも、そんなことを言って妻を悲しませてしまったので、今はそれをとても反省しています……。
――古泉さんもしまおさんも、お子さんはやんちゃな時期ですよね。
古泉 そうですね。言うことを聞かないときは、「おばけが来るよ」とか「カミナリ様が、おへそを取りに来るよ」と言ったりします。特に、カミナリ様が来ると言うと、何があってもおへそから手を離さない(笑)。うーちゃんは怖がりなので。
しまお えーっ、素直ですね。うちの子は最初から見抜いててダメです。お化けとか通じないんですよね。現実主義なのかな? でも、なかなか寝てくれない夜、外からトランクをガラガラ引く音がしたとき、「あれは言うことを聞かない子をトランクに詰めて連れて行っている音だよ」と言ったら、すごく怖がってました。でも、そう言った私自身も怖くなってしまいました(笑)。
古泉 僕もそれ、パトカーバージョンで使います。「食べ物を粗末にするような悪い子は、おまわりさんがパトカーで連れて行くよ」って。しまおさんは、お子さんが悪いことしたとき、叱ります?
しまお 叱るけど、無視もします。泣いても無視。
古泉 えっ、無視!? かわいそうじゃないですかー! 僕は絶対無理。
しまお だって、こちらの反応をうかがいながら泣いたりするんだもん。
古泉 あー、あるある。
しまお 泣いたら優しくしてくれると期待しているから、そうなったらシカトを決め込むしかないですよ。
古泉 いや〜、僕なら、いくらでも抱っこしてあげますよ。
しまお クセになると、抱っこはこっちの体が持たなくなっちゃう。
古泉 僕の妻も、ぎっくり腰になっていましたね。
しまお 私も、はりに通ってますよ。