堂本光一考案のコンサートタイトルが2人の運命に重なった、KinKi Kidsの不思議な力
それでいて、ソロコーナーでは、光一がキレキレのダンスや、キラキラの王子様感や、炎の演出で「ザ・王道ジャニーズ」を存分に見せてくれる。いつもファンに向けて発する言葉は毒舌だらけなのに、パフォーマンスでは「サービス満点の細やかなおもてなし」を欠かさない。
そして、剛は「さけるチーズ」状態だという膝の半月板の損傷を抱えつつも、膝に負担がかからないような軽やかでしなやかで、ちょっと神秘的ですらあるダンスを流れる音楽に乗せて披露する。
2人のソロも含めて、パフォーマンスのクオリティの高さと、MCのユルさのギャップは、キンキのコンサートの大きな特徴だが、今回は特に状況が状況なだけに、MCで笑えば笑うほど、歌声に泣かされてしまう。笑いと感動と切なさと、感情がもう大忙し。
しかも、最初から最後まで、ステージ上で光一が剛に「大丈夫か」と声をかけたり、背中をポンポンしたりするような場面は一度も見られなかった。言葉にも、態度にも、不安や労いなどの感情は一切出さない。でも、誰より心配し、緊張していることは痛いほどに伝わってくる。
ちなみに、光一考案のサブタイトル「Everything happens for a reason」は「起こること全てに理由はある」という意味。途中、ヘッドホンを少しズラして懸命に音を聞こうとしたり、苦しそうな表情を浮かべたりする剛は、見ていて痛々しくつらい部分もあった。キンキの場合、通常は、2人の声も歌い方も全然違うのに、音のアタマが少しのズレもなく揃い、響きがぴたりと重なる心地よさがある。だが、今回は、これまで通りのシンクロ感だとは言えない部分もあった。
にもかかわらず、これまでよりも一層、歌声が真っすぐ心に届いてくる。
結果的に、オーケストラの生演奏とキンキの楽曲、歌声の相性は予想以上にぴったりで、これまでにない素敵なコンサートとなった「KinKi Kids Concert 20.2.21~Everything happens for a reason~」。
運命論者でなくとも、KinKi Kidsにこれまで与えられてきた数々の試練や、彼らの向き合い方・乗り越え方を見ていたら、「全てが起こるべくして起こったものなのではないか」と、つい運命を感じてしまう。
KinKi Kidsにはそんな不思議な力がある。
(田幸和歌子)