にゃんこスターはなぜ若者にウケる? 「YouTuber的」「いいね!感覚」変容する“面白い”の意味
『キングオブコント2017』で、第2位という好記録を収めた男女お笑いコンビ・にゃんこスター。ボケのアンゴラ村長が、大塚愛の「さくらんぼ」に合わせて披露する「リズムなわとび」(音楽に合わせてダンスを交えながらするなわとび)に、縄跳び大好き少年ことツッコミのスーパー3助が引き込まれていく……という異色のコントは、若者を中心に「面白い」と注目を集め、同大会後は、グランプリ受賞者のかまいたちをしのぐ売れっ子に。しかしその一方、ネット上では「にゃんこスター、全然面白くない!」「あんなのお笑いじゃない」「どうせすぐ消えるでしょ」といった息巻く者も少なくないのだ。
これは何も、にゃんこスターにだけ見られる現象ではない。「若者に人気の芸人の面白さがわからない大人」というのはいつの時代にもいるし、最近でも、「2017年ブレイク芸人ランキング」でワンツーフィニッシュを飾ったブルゾンちえみとANZEN漫才・みやぞんにも、同様の指摘がみられている。そこで今回は、元吉本芸人で、“コミュニケーション学”や“笑い”に関する研究をしている桜美林大学講師・瀬沼文彰氏に取材を敢行。にゃんこスター、ブルゾンちえみ、みやぞんの笑いがまったくわからない人に向けて「彼らが若者にウケる理由」を聞いた。
――にゃんこスター、ブルゾンちえみ、みやぞんは、特に若者に人気という印象があります。瀬沼先生はどうお考えでしょうか?
瀬沼文彰氏(以下、瀬沼) そうですね、基本的に若い世代にウケている芸人だと思います。大学の学生にも聞いてみたところ、そのような印象でしたし、一方で39歳の私と同世代の人たちは「ちょっとなぁ」といった反応でした。
――特にどの層の若者に、どのようにウケているのでしょうか?
瀬沼 にゃんこスターは10代、また子どもにも人気だと思います。わかりやすいネタなので、マネしやすいですし、あの通りにやれば笑いが取れるという点が人気なのではないでしょうか。例えば10代は、カラオケでにゃんこスターのコント「リズムなわとび」を応用して、マネしているそう。(リズムなわとびを披露するアンゴラ村長が、サビになると突然“なわとびを捨てて跳ばなくなる”という1シーンになぞらえて)「サビのところで“歌わない”」というふうなネタをやると、簡単に笑いが取れるのだとか。あと、これは学生に聞いた話なんですが、友達が質問に答えない際、(スーパー3助をマネて)「答えないんかーい!」とツッコむことがあると言っていました。彼らのネタは、日常会話の中でも応用できるのです。
ブルゾンちえみは、大学生や20代前半の人たちにウケている印象です。彼女のネタのような“意識高い系の女性”が身近にいる層には、面白いのかなぁと。若者ではないですが、そういった女性の上司にあたる人も、面白いと感じているのでは。みやぞんも若者に人気ですが、正直、どの世代にもウケていると思います。彼の出演する『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)自体が、そういったつくりだからなのかもしれませんが。みやぞんはイジられキャラで、天然っぽい一方、サーカスのようなことまでしたり、絶対音感を持つなど芸達者で、さらに努力家の一面もある。そのギャップは魅力ですよね。努力をする姿を見せているという点で、子どもの親世代にも受け入れられるだろうし、また、強烈な天然キャラというのはわかりやすいので、高齢者も理解できるのではないかと感じます。