中村真樹医師インタビュー

「シンデレラタイムはウソ!」「眠りの質にデータなし」――睡眠の都市伝説を医師がジャッジ

2017/12/02 17:00
negao1129
Photo by Photocapy from AC

 美容に関心の高い女性を中心に、長年ささやかれている、午後10時から午前2時の“シンデレラタイム”をご存じだろうか。それは、この時間帯に睡眠を取ると、成長ホルモンが分泌され、美肌などの美容効果が得られるという説である。しかし、青山・表参道睡眠ストレスクリニック院長の中村真樹先生は、『仕事が冴える「眠活法」: 疲れを「リセット」する 脳を「活性化」する』(三笠書房)でこの説を完全否定。なぜそんなウソが世間に広まってしまったのか? 今回は、シンデレラタイムをはじめ、巷の睡眠にまつわる都市伝説の真偽を聞いた。

■シンデレラタイムはない! 美肌に効果的な睡眠とは?

――「シンデレラタイムに睡眠を取ると肌にいい」という話は、特に女性の間では“常識”として認識されていますが、本当にウソなのでしょうか?

中村真樹医師(以下、中村) はい、シンデレラタイム自体が存在しません。というのも、成長ホルモンは安眠できる状態で眠りに就いて30~90分後に分泌されるので、何時に寝るかは関係ないんです。実際に、シンデレラタイム以外の時間帯でも就寝後30~90分に成長ホルモンの分泌を認めるデータがあり、実証されています。

――なぜシンデレラタイムのようなウワサが広まったのでしょうか?


中村 眠りの研究を行う際は、午後9~10時くらいに消灯することが多いため、被験者の成長ホルモンの分泌のタイミングが、ちょうどそのあたりの時間帯で重なって、「成長ホルモンが分泌される時間」と勘違いされたようです。さらに、シンデレラタイムというキャッチーなコピーがついたことで、より世間に広まったのではないでしょうか。

――では、何時に寝ても成長ホルモンの効果は得られるということですね。

中村 率直に言ってしまえば、その通りです。ただ、睡眠と密接に関わるホルモンは、成長ホルモンだけではありません。例えば、ストレスホルモンといわれる「コルチゾール」は、体内時計に合わせて分泌されるため、眠りの時間がずれてしまうとさまざまな弊害が出てしまいます。美肌と直接は関係しませんが、美の基本ともなる健康を維持するためにも、規則正しい生活を送るのは大切なことです。

――美肌に効果的な睡眠方法などはあるのでしょうか?

中村 肌に直接いい影響を与える眠りというのはありませんが、強いて言えば、睡眠時間をきちんと確保することでしょうか。睡眠中はいわば体のメンテナンス時間。分断されるとメンテナンスが始めからやり直しになってしまうので、連続で7~8時間ほど眠ることが理想的です。眠りの質においては明確なデータがないものの、健康体で、規則正しい時間に、通常の寝具を使っていれば、ほぼ問題ないとされています。リラックスしていると寝つきが良くなるので、眠りに就く前の1~2時間、短くとも30分はゆったり過ごすようにしましょう。また、眠る前は体温が上がり、下がり始めるタイミングで眠気が出るので、ヨガやストレッチ、ぬるめのお湯での入浴もおすすめです。


――連続で7~8時間の睡眠が必要とのことですが、深く眠れていれば4~5時間でも問題ないとのウワサもあります。

中村 それはまったくのウソです。例えば、質のいいサプリメントを飲んでいたら食事を摂らなくてもいいかといえば、そうではありませんよね。眠りも同じで、トータル的なバランスが必要なんです。短時間睡眠が続くと、パフォーマンスが落ちたり、狭心症や心筋梗塞のリスクが上がったりするとのデータもあります。また、睡眠時間が短いほど、食欲増進作用のあるグレリンというホルモンの濃度は上がり、満腹感をもたらすレプチンというホルモンの濃度は下がって太りやすくもなるので、美容を気にする女性は特に注意が必要です。

仕事が冴える「眠活法」: 疲れを「リセット」する 脳を「活性化」する (単行本)