ジャニーズJr.・永瀬廉、「顔が良い」というアイドルとしてシンプルで最大の力
今回ツッコませていただくのは、11月20日放送分『痛快TVスカッとジャパン』(フジテレビ系)に出演した、ジャニーズJr.のMr.KING・永瀬廉の”攻撃力”。
これまでSexyZoneの佐藤勝利、ジャニーズWESTの重岡大毅が登場した「王道系ジャニーズ×年上女性との恋」企画の好評ぶりに制作側が味をしめたのか、今回は永瀬が登場。美容師専門学校の生徒に扮し、11歳上の先生(田畑智子)と恋に落ちるという「胸キュンスカッと」と題した再現ドラマを演じた。
先生と男子生徒の「禁断の愛」、男子は先生が出した無理難題を見事に果たし、迎えにくるというハッピーエンド。それだけの内容なのだが、すごかったのはTwitterの反応だ。
「れんれん(永瀬の愛称)かっこよい」「れんれん、今日も顔がいい」「どのアングルで見てもれんれんのお顔が美しい」「永瀬さんちのれんれん顔が大正義すぎる」
賛辞の大多数が、“圧倒的顔ヂカラ”に関するもの。なかには「永瀬廉さん、顔が良すぎるだろ 内容がほとんど頭に入ってこない」「廉くんのこと全人類の記憶から抹消したい こんなに顔ファン増えると思わんだ」といった呟きまであった。
演技は、まだあどけなさの残る時期の『信長のシェフ』(2013年、テレビ朝日系)の森蘭丸役時代に比べ、ずいぶんナチュラルになった。とはいえ、それでも気合が入るとき、キメ顔をするときなど、なぜか眉が大きく動くクセのため表情が難解で、「えっ、これ、どういう気持ち?」と戸惑わされること、しばしば。
しかし、そんなことはどうでも良い。何しろ視聴者たちは「顔が良すぎて、内容がほとんど頭に入ってこない」のだから。
バカバカしいように見えて、これって実は、アイドルファンの楽しみ方の原点である気がする。今はメディアの多様化、SNSの発達などにより、誰もがプチ批評家になってしまった時代。自分自身も含め、ドラマを見ては演技や演出を批評し、アイドルを見てはスキルを分析し、語り、情報を集めまくっては、妄想を働かせたり、勝手に読み解いたりする。
もちろんそれは、ある程度の段階までは楽しい。知れば知るほど、もっと知りたくなるし、さらに知るとさらに楽しみが広がる。でも、どこかの時点でふと思う。
「あれ? なんでだろう? 今の方がはるかに詳しくなったはずなのに、今の方が以前より全然楽しくない」
スキル云々、関係性云々、そんなことを語るよりも、「顔が良い!」と叫ぶシンプルさの、楽しそう感。この日、ゲスト出演した真矢みきが、VTRの永瀬を見て興奮した様子で「イイ! 顔がイイ!」と素直に言い放ったときも、つくづく楽しそうだった。
そして、こういう気持ち、いつのまにどこに置いてきてしまったんだろうと、しみじみ思う。話が脱線するが、倉本聰の『やすらぎの郷』(同)の中で、往年の大女優・姫こと九条摂子(八千草薫)が若い頃の自分の映像を見て、こんなことを言うシーンがある。
「すごく演技がヘタっぴだった。でも、とても綺麗だったの」「でも女優はそれでよかったのかもね。若くてきれいなら、お客様に幸せをあげられるものね」
ここには、倉本らしい皮肉が含まれているのだろう。でも、確かな真実でもあると思う。ジャニーズ全体の傾向としては、いま「オヤジ層」の方が好感度も認知度も、人気も高い状態になっている。
しかし、永瀬に沸く茶の間を見て思った。
本来、アイドルの最大の力って、人を笑顔にし、幸せな気持ちにさせる力だ。その方法は人によって異なるし、スキルもあるに越したことはない。積み重ねてきた者だけが持てる力があるのも、もちろんだ。でも、ここまで、ただただ「顔面」に視聴者の目を釘付けにし、夢中にさせてしまう今の永瀬には、アイドルとして最もシンプルかつ最強の力があるのかもしれない。
(田幸和歌子)