虻川美穂子、「女子力高いよね」を褒め言葉と受け取る“性格”のメリット
女性を褒める難しさで思い出すことがある。個人的な話で恐縮だが、私は昨年、男性向けに“女性の褒め方”に関する書籍を上梓した。恋愛や婚活市場では、年収の高い男性が強者になる。“年収は個人の努力ではどうにもならないのだから、女性をほめることで自分の付加価値を新たに生み出そう”をテーマに掲げたハウツーである。“男性向け”とはっきり銘打っているにもかかわらず、若い女性や女性誌から「この褒め方は、同姓に使っても有効でしょうか?」という問い合わせが相次いで驚いたことがある。やりとりをしている際に感じたのは、「褒めれば、相手は喜ぶはず」「職場のお局は褒め言葉に弱い」という女性の思い込みだった。
上述した例でもわかるとおり、確率100%の褒め言葉というのは、存在しない。
虻川は、基本的に他人に言われたことをあまり噛み砕かずに受け止めるタイプのようだが、その虻川でも「ウソだ」と思う褒め言葉があるらしい。ファッション誌の撮影時に、カメラマンなどのスタッフから、やたら「カワイイ」と言われた場合、「そんなわけない」と思って却って表情が硬くなってしまうそうだ。
この例でもわかるように、ただ「褒められたから」うれしくなるわけではなく、「受け手の自己評価と褒め言葉がマッチしたから」うれしくなることがわかる。自分が自信を持っている部分を褒められればうれしいと感じ、そうでない部分を褒められると「ウソだ」と思うのだ。例えば千秋は、15歳年下のTBSイケメン社員と再婚を果たした。千秋自身が夫を「イケメンだ」と思っているから、「旦那さんかっこいいね」という言葉がウラのない褒め言葉だと解釈できる。虻川はファッション誌のモデルとくらべると、自分は劣ると思っているので、「カワイイ」と褒められても響かないのだ。
褒めてその場の雰囲気をよくしたいという気持ちはわかるが、どうやって褒めようか迷っている時点で、その人は、相手の価値観や自己評価を読み切れていない。そこに適当な褒め言葉を投げかけた場合、喜ぶ人もいるだろうが、「調子がいい」とレッテルを貼られる恐れもある。適当に褒めると、却って自分の評価がマイナスになる可能性もあるわけで、それなら褒めない方が無難ではないだろうか。コミュニケーションを円滑にしたいのであれば、適当に褒めるより、きちんとお礼を言う方が効果的だと思う。
虻川と言えば、数年前までは、夫婦問題を扱うバラエティー番組の常連だった。イタリアンレストランのシェフである夫は、虻川の欠点(料理がヘタ、服のセンスが悪い、がさつ)を意気揚々と話し、虻川も夫がスキンシップを拒むエピソードを披露していたため、離婚寸前と報道されたこともある。その一方、虻川夫は、虻川のおかげでテレビに出演し、芸能人人脈を得てレストランは繁盛。夫ばかりがトクをしているので、虻川は「利用されているかも」と疑いを持ったこともあるそうだ。しかし、虻川は今や待望の出産を果たし、子育てをしながら芸能活動を続ける働くママである。「短気は損気」というが、人のウラを読みすぎるのもまた“損気”なのではないだろうか。人のウラが読めないことで保たれる平和もあるのだ。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、最新刊は『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
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