カルチャー
湯山玲子氏インタビュー

美容アカウントの異様な熱狂――Twitterで“美人になりたい女”の権力争いが勃発する理由

2017/11/12 17:00

「不況に陥ると、『おとなしく思考停止状態になった方がいい』『エネルギーが低い人の方がうまくいく』といった処世術がはびこります。そんな時代において、“エネルギーのある女”は生きにくくなっている。エネルギーがあって、“勇気”もスキルも健康な野心もある女は、起業したりして社会的に成功するけど、エネルギーだけがあってそれを実人生に生かすべくの勇気や実行力のない女は、小さな世界のプチ権力者になっていくんですよ。ママ友グループでボスになる、職場でお局になる……Twitterで崇められる美容アカウントは、それと同じなのかもしれません。そんなマウンティングをするエネルギーがあったら、もうちょっと自分の人生を実り豊かにできそうな感じがしますよね。だって、自分で納得のいく化粧品をつくってもいいわけだから。でも、そういうことはしない。面倒臭いし、成功するかわからないし」

 女が健康的にエネルギーを発散できない理由には、男社会の影響もあるようだ。女が社会において、権力を持ち、上に行くことがよしとされない……そんな背景から、小さな世界での“プチ権力”を得ようと躍起になってしまうのかもしれない。

 ただ、美容アカウントによって美しくなり、プチ権力を得たとして、「果たしてゴールはあるのか?」と、湯山氏は疑問を呈する。

「美容アカウントのような現象を見ていると、女性が“逃避”しているようにも思えるんです。会社も親も世間の常識も、もう自分の生き方を決めてくれない今の時代において、若い女性は『自立すること』を強く求められ、『あなたは何をやりたいの?』と問われ続けている。親の教育によって、小さな頃からそういった自立の訓練をしてきた人はいいけれど、だいたいがうまくいっていない印象があります。そこで、“美”という価値観にすがり、『女は美しくなれば幸せになれる。玉の輿にだって……』と、宝くじ当選みたいな可能性を追いかけている。なぜなら、その間は“夢”を見ることができるわけですから」

 美容アカウントブームが浮き彫りにする、女が置かれている切実な現状。ブームが去ったとしても、また新たな“女たちがプチ権力を奪い合う逃避の場”が生まれるのかもしれない。

最終更新:2017/11/12 17:00
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