詩織さん、1,000万円の損害賠償請求――「準強姦容疑事件」民事で事実認定の可能性も
フリージャーナリストの詩織さんが、元TBS記者でジャーナリストの山口敬之氏から性的暴行を受けたと訴えていた準強姦容疑事件で、東京地検の不起訴処分に対し、東京第6検察審査会(検察審)は9月21日付けで「不起訴相当」と議決した。これに対し、ネットでは疑問を持つ声が続出している。また28日には、詩織さん自身が真相究明などを求めて東京地裁に民事訴訟を起こしたことを明かした。
刑事裁判で不起訴処分、つまり罪にならなかった事件について、民事裁判で慰謝料を請求することは認められるのだろうか? 刑事・民事ともに詳しい法律事務所あすかの冨本和男弁護士に聞いた。
「認められる『可能性』はあります。刑事裁判では被告人(この件では山口氏)を犯罪者として処罰するかどうかが判断されるので、裁判所に提出できる証拠が限られ、裁判所の事実認定も無実の者を絶対処罰すまいという思いから厳しくなります。
これに対し、民事裁判では不法行為(強姦被害)を理由とした損害賠償請求を認めるべきかどうかが判断されるので、裁判所に提出できる証拠について原則として制限がなく、裁判所の事実の認定も、事実誤認はすまいという思いから厳しく行われますが、刑事裁判の場合よりは緩やかです。したがって、刑事裁判では強姦の事実を認めてもらえないが、民事裁判では強姦の事実を認めてもらえるという場合もあるわけです」
つまり、裁判で強姦の事実を認められれば、慰謝料支払いの判決が出る可能性があるということだ。詩織さんは「精神的慰謝料などとして総額1,000万円の損害賠償」を求めるとしているが、実際に裁判で認められる現実的な金額はどのくらいなのだろうか?
「慰謝料額は、強姦行為の内容、被害の内容・程度、加害者と被害者の関係、加害者の支払能力、被害感情の大きさ等を元に裁判所が決めます。裁判で1,000万円の請求が、まるまる認められたという例は聞きません。原告(詩織さん)は『総額1,000万円の損害賠償』を求められているようですが、実際に認められる額は200万~500万円くらいではないかと思います」
詩織さんは、「私が受けた行為は28年間生きてきたなかで最も醜い人権侵害」と主張しており、詩織さんの弁護士も「(山口氏の行為は)民法上の不法行為にあたる」としている。民事裁判によって、真相が明らかになることが期待される。
冨本和男(とみもと・かずお)
弁護士。債務整理のほか債権回収等の一般民事事件の弁護、刑事弁護、離婚・相続等の家事事件の弁護など、さまざまな事件を担当。
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