“ネットで金集め”が炎上する理由――真木よう子と山田孝之の違いをITジャーナリストに聞く
もともとYouTuberの代名詞的存在であったヒカル。過去に悪徳商法に手を染めていたという説もあるが、VALU騒動の引き金となった最大の原因とは何だったのか?
「『全くVALUの仕組みを理解していなかった』と、騒動後にヒカルさんは話していますが、同じ理解不足といっても、真木さんとは事情が全く異なります。ヒカルさんは仕組みを理解しないまま、動画のネタにしようと参加し、結果的に売買するほかのVALUユーザーを小馬鹿にするような手法を取りました」
“小馬鹿にするような手法”とは、具体的にどんなものなのだろうか?
「VALUは、まさしくクラウドファンディングです。芸能人を含む有名人などの“価値(社会的評価)”の浮き沈みを逆手にとり、そこに値をつけて売買するという仕組みです。ヒカルがそうであったように、VALUで売り手になる人は、価値をどんどん高値に上げなくてはいけません」
たとえば株式市場では、株が上がることで企業と株主の双方がハッピーになる。VALUでも同じで「今後も成長し、お金を出してくれた人にとっても、価値のある活動をします」と売り手は買い手に示す。そして高値になり、買い手も自身が手にする“仮想株式(VALU)”の価値が上がることを望んでいる。
「しかし、ヒカルが取った行動は買い手を裏切るものでした。“どういう意図で買い手が資金を出しているか”を考えもせず、いきなり全株を売却したのです。仮想株式が大量に供給されたために、需要と供給のバランスが崩れ、ヒカルの値段がガクンと下がった。つまり買い手にとっては、すでに投資して手にしたヒカルの仮想株式の価値が下がったということです。株市場でいう“ジャブジャブ”状態ですね」
たとえヒカル自身の無知には悪気がなかったとしても、すでにヒカルに価値を見いだしてお金を投資していた人にとっては、たまったものではないだろう。
「VALUと同じ評価経済のサービスとして『Timebank』が始まりました。こちらは著名人や専門家の“時間”を10秒単位で買うという仕組みですが、たとえばブロガーのはあちゅうさんなどは、なんと20分で6万6,720円が付けられた。その値に対して『高すぎて気持ち悪い』との声もネットで出ています」
クラウドファンディングやVALUなど、ネットがお金をやりとりできる場としても機能し始めてから日はまだ浅い。しかし有名人を中心とするネットでのお金集めは、今後も増え続けるに違いない。買い手側としては、仕組みを正しく知る必要があるだろう。
「真木さんやヒカルさんの騒動からも言えることですが、売り手側もきちんと理解しなければなりません。『とりあえずお金を集めて、何かすればいいんでしょう?』という姿勢では、必ず炎上します」
お金でしくじれば、ネットどころか芸能界からも即追放となりかねない。コミケでいえば、叶姉妹や小林幸子をロールモデルとするべきか。いずれにせよ、ネットでのお金の取引が浸透するまでには、まだ時間がかかりそうだ。
(門上奈央)
三上洋(ミカミ・ヨウ)
ITジャーナリスト。専門とするジャンルはネット事件や詐欺対策などのセキュリティ分野、スマートフォン分野の業界動向や有害サイト対策、電子マネーなど。
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