カルチャー
『ちびしかくちゃん』レビュー

まる子ファン拒絶!! さくらももこセルフパロディ『ちびしかくちゃん』は、なぜ胸クソ悪いのか?

2017/10/01 17:00

 ネット上を見ても、「あまりにも居たたまれない」「自分の作品をオモチャにしてるようにしか思えない」「しか子が不憫で泣けてくる」「なぜ、さくらももこはこの作品を描いたのか?」などの酷評が飛び交っており、戸惑いを見せる読者が続出している。

 しかし、『ちびしかくちゃん』を読んだ後、あらためて『ちびまる子ちゃん』のページをめくると、ギャグに隠された“残酷さ”が目につくようになった。例えば、掃除委員の前田さんは、クラスのみんなが掃除をサボることに怒ってヒスを起こすも、「泣き顔がブスすぎる」という理由で笑われ、みぎわさんは花輪くんから拒絶されているのに、自分は好かれていると勘違いをする“道化”として、まる子やたまちゃんらに哀れまれている。

 それに、火事で家が全焼した永沢くんを「はげます会」が描かれた回もあったが、冷静になって考えてみると、絶対に笑ってはいけない内容である。『ちびしかくちゃん』とは比べ物にならないほどの残酷展開のオンパレード。日曜の夕方に国民的アニメとして堂々と放送されるような内容ではなかった……そう思ってしまった。

 まる子は、『ちびまる子ちゃん』の世界において、ある意味“強者”だったのかもしれない。どちらかと言うと、奇妙奇天烈な周囲の人たちを哀れんだり、笑ったり、時にドン引きする側の立場にあり、一方『ちびしかくちゃん』でのしか子は、徹底して“弱者”として描かれている。人間関係の残酷さが描かれているのは両作品とも同じ、ただ主人公のポジションが真逆になったから、胸クソ悪く映る。ネット上には、「さくらももこは変わっちゃった」という意見も散見されたけれど、実は30年以上ずーっと同じことを描いているようにも思えるのだ。

 ただ、やっぱり、なぜこの作品を出さなければいけなかったのかは疑問が残る。「前田さんのヒス泣き顔で、笑いづらくなること」を恐れない人は、ぜひ読んでみるといいかもしれないけれど……。
(カコヨシコ)

最終更新:2017/10/01 17:00
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