アスペルガーの夫や彼氏から「逃げてもいい」! “妻だから支える”呪いに耳を貸すな
――交際中に彼がほかの人とは違うなと思ったエピソードなどはありますか。
野波 今回の本にも掲載していますが、彼の家族に初めて紹介してもらうときに、挨拶もそこそこのうちに私のスカートを「3万円もしたんだって」と言ったときはビックリしましたね。そういうのは打ち解けたあと雑談のひとつとしていうようなものですよね。彼の家族からの私の印象がどうなるかなんて考えてないんです。
それ以外にも、プレゼントを贈るのが好きなんだけど、相手のことは考えずに自分の贈りたいものにする。あまり感情を表さない。表情が乏しい一方で、その表情や動作が漫画っぽい。断ることができない・・・・・・など、たくさんあります。
――いろいろと特性があるんですね。でも周囲には、癖や性格だと思われて、気にされないような気がします。
野波 なので、発達障害は気が付きにくいのかもしれませんね。もし、夫や彼氏に違和感があり、発達障害を疑っているのならば、子どもの頃のことを聞いてみるといいですね。みんなができるのに自分だけはどうしてもできなかったこと、みんなと違っていると感じたこと、先生や親から指摘されていて治らなかったことなどなかったか?
例えばなぜか仲間外れにされる。普通にしてるつもりなのに怒られる。物事を期日までに終わらせられない。忘れ物が多い。出かける前の支度が間に合わなくてバタバタする。遅刻が多い。机の上や中がぐちゃぐちゃなど。それが今も継続していたら、その人は発達障害(ASDやADHD)かもしれません。
――もし、当てはまるようなら、本人に「発達障害なんじゃない?」と言ってよいものなのでしょうか。
野波 難しいところですね。「発達障害」という言葉は強いので拒否反応がでてしまうことも多いです。私の経験上アスペルガーの場合、自覚する人は稀です。「俺は全然アスペなんかじゃない、ありえない!」と自信を持っているほど可能性が……。
――疑いがある場合は、病院での診断はやはり受けた方がよいのでしょうか。
野波 無理やり連れていくのはいけません。まず、本人が困っているかどうかが重要です。「忘れ物が多くて困ってるよね」「物の整理が苦手だよね」など具体的な事例を出して、本人がそうかもと自覚して、自発的に病院に行くように促す。本人が嫌がるようなら、病院に行かせるのは諦めましょう。彼が病院に行く行かないは問わず、妻や彼女である自身が、彼の特性を理解して対応していくのがいいと思います。
――彼の特性を理解してとは、どういったことでしょうか。
野波 「発達障害だから〇〇なはず」などとラベリングはせずに、その人個人をよく観察することが必要です。おかしいな、不可解だな、と感じる言動の、根っこにある発達障害の特性を探りましょう。(注意欠陥、感覚過敏、感覚鈍磨、強いこだわりなど)。特性に当てはまることであれば、本人にとって変えることが難しいと知ることが、第一歩です。
もし、日々の生活で困っていることがあれば、言い方を変えてみたり対応を工夫したりすれば、うまく誘導できることもあるので、専門書を読んだりして試していくとよいと思います。アキラさんの場合は、「今日は雨が降りそうだから窓を閉めて」はできるんです。でも、「今日は雨が降りそうだけど蒸してるから、少しだけ窓を開けて」はダメなんですよ。「雨の日は窓を閉める」「晴れの日は開ける」などわかりやすく、短い言葉で言わないとダメですね。
あと、結婚するとき、子どもが生まれたときなど、最初にルールを決めて明文化することをおすすめします。そして、そのルールは変えない方がいいですね。例えば「夜10時になったら奥さんの肩を揉む」、「ご飯を食べ終わったら、ごちそうさまと言う」など。
――そこまで細かくですか。
野波 「いただきます」「ごちそうさま」を言わない、アスペルガーの方は多いんですよ。合理的に考えるので意味がないと思っているんです。言っても言わなくてもご飯は食べられるって。ルールはたくさんになっちゃうけど、壁にでも貼っておけばいいんですよ。修正はなかなかできませんから、最初が肝心です。ルール以外のものは都度都度言うようにするしかないですね。