ジャニーズを楽しめずハマれなくなった……“事務所担”を苛む「SMAPロス」の空虚感
香取慎吾、草なぎ剛、稲垣吾郎の3人が9月8日にジャニーズ事務所を退社。新たな一歩を踏み出した。
退社当日を迎えるまで、いや、今もやっぱりSMAPがなくなってしまったという実感が、どうしても湧かない。実際、ファンの中にはまだあきらめていない人たち、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで再集結するのではないか、などといった希望を持ち続けている人も大勢いる。ジャニーズ事務所への復讐の炎を、心に燃やし続ける人だっている。
一方、世間の反応は、「週刊文春」(文藝春秋)の第一報以降、長期にわたって報道されてきたジャニーズ派閥問題、後継者争いの話題に飽きてしまった人や疲れてしまった人、「ブラック企業」という印象を持った人、何事もなかったかのように忘れかけている人などさまざまだ。
バラエティでの活路を切り拓いたこと、月9をはじめ、多数のドラマで女性たちを魅了し、「アイドル」という枠を超越したSMAP。だが、その功績を語るといった気分には、まだなれない。一連の報道で、BGMに「世界に一つだけの花」「ライオンハート」「BEST FRIEND」が使われすぎたことで、本来は非常に良い曲にもかかわらず、自分の中ではいずれも暗く重い気持ちになる、つらい曲になってしまった。
SMAPメンバーたちの個人仕事を見たり、耳にしたりするたび、実はあまり変わっていないことを感じ、ホッとする面もある。
だが、もともとSMAPオンリーファンではなく、SMAPを含めたジャニーズ事務所全体の「箱推し」、言ってみれば「事務所担」の自分などは、SMAP騒動以降なんだか空っぽな状態になってしまっている。
一部のSMAPオンリーファンのように希望を持ち続けることもできず、もちろん何事もなかったかのようにもできない。その影響を強く感じるのが、このところ、ジャニーズの番組全般を楽しめなくなってしまっていることだ。
ジャニーズのバラエティ番組が、どれもなんとなくマンネリに思えてしまって笑えないし、ドラマもなかなかハマれない。かつて階段からあふれるほど大勢のジャニーズJr.が『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演した際などは、その勢いに興奮しワクワクしたものだが、最近はメインメンバーの顔ぶれが少しずつ変わっていても、「また太鼓とローラースケートとバトンか」などと既視感ばかり覚えてしまう。
また、かつては『ジャニーズカウントダウン』だけで見られる特別感があった、デビュー組によるコラボ「ジャニーズシャッフルメドレー」なども、今は音楽特番で必ずと言っていいほど披露されるようになり、新鮮味がなくなってしまった。しかも、かつては「ダンス特化ユニット」「歌うまユニット」など、それなりのテーマ性が感じられ、スペシャル感を覚えていたのに、最近では「どのユニットが良いかなー。どこも統一感がなくて、意外性もなくて、似たり寄ったりだな」などと感じてしまう。
もちろん、こうしたジャニーズシャッフルユニットの類にSMAPはもともと加わっていない。そこにはマネジメントなどの諸事情があったわけだが、それでも他グループと横並びにならないSMAPの特別感にファンはあこがれを抱いた。
また、そんな「孤高」の存在に見えたSMAPが、東日本大震災復興支援プロジェクト「Marching J」に参加し、他グループを牽引していったときには、心底頼もしさを感じ、勇気づけられる気持ちになったものだ。だが、思えばここから、事務所の派閥争いなど、不穏な空気が流れ始めていたのかもしれない。
目の前のことが楽しめず、振り返ってしまってばかりの今の状態を言葉にするなら、それは「SMAPロス」なのだろう。自分のような「事務所推し」ですら、拭い去れない空虚感に苛まれていることを考えると、SMAPロスの大きさはどれほどのものだろうか。
ここからはさまざまな人々の「SMAPロス」を取材していきたいと思う。
(田幸和歌子)