セカオワ・Saori、手書き文字からわかるFukaseへの依存度【THE 筆跡鑑定ファイル】
――「へんとつくりの間が広い」は稲田朋美さんの回でもありましたが、特に女性にとっては「モテ字」なのでしょうね。一方、夫を衰弱させている松居一代さんの字はへんとつくりの間は狭めでした。
牧野 文字の小ささと、縦線の突出が控えめなことを合わせて考えますと、相手の世界の中で生きていくほうが安心できて、自分らしさを感じるのでしょう。ほかに、彼女らしいと思う特徴が「接筆あいまい型」です。接筆(せっぴつ、「日」など四角い文字の左上の角)が閉じているのか開いているのかが、はっきりしない形です。この形の人は非常に優しいのですが、それが迷いやすさにつながります。Saoriさんは自分自身ではっきりした決断を下しながら進んでいくタイプではないのでしょう。自分の意見はあったとしても、Saoriさんの基準は相手によって変化していくようです。今回の小説のモデルといわれている深瀬さんとの関係性も、まさにその通りなのではないでしょうか。縦線突出が控えめな人は協調型といわれるのですが、出方によっては相手に依存しがちな面も見られます。
自分と周りの境界線がはっきりしないのか、はっきりさせたくないのかはわかりませんが、そんなあいまいな世界の中にいることが好きなのでしょう。相手のすべてを受け入れ支える、それがSaoriさんの生き方のベースなのでしょう。批判などを受けても、セカオワハウスでメンバーと一緒にいればダメージも少なくて済む。セカオワは傷つきやすいSaoriさんにとって、なくてはならないアイテムなのかもしれません。
――セカオワは繊細な人はどう生きるのがいいのかの一つの可能性ですね。「僕たち」にすることで身を守る。もちろん「僕」が「僕たち」になることでの面倒くささや鬱陶しさもありますし、「世界」のサイズが自分たちの内側でどんどん狭まっていくという危険性もありますが……。
牧野 Saoriさんの書く小説は奇想天外な物語や、人間の心の奥底に潜む残虐さや醜さをテーマにすることはないでしょう。そうしたものと向き合うことは耐えられないからです。それよりも日常生活での細やかな心の動きをきれいに描写することが得意分野ですので、今後の作品もそのようなものが多くなると思われます。自身がファンタジーの世界から飛び出して、たくましくなっていく姿を描いた作品も楽しみにしています。
(石徹白未亜)
牧野秀美
筆跡鑑定人。筆跡アドバイザー・マスター。筆跡心理学をもとにした鑑定と診断を行う。著書に「名前を書くだけ 自分のイヤなところは直る」(東邦出版)
・ほっかいどう筆跡鑑定研究所