司法試験の勉強中に出産、別居婚の夫が育休2カ月半取ったが……【別れた夫にわが子を会わせる?】
『わが子に会えない』(PHP研究所)で、離婚や別居により子どもと離れ、会えなくなってしまった男性の声を集めた西牟田靖が、その女性側の声――夫と別居して子どもと暮らす女性の声を聞くシリーズ。彼女たちは、なぜ別れを選んだのか? どんな暮らしを送り、どうやって子どもを育てているのか? 別れた夫に、子どもを会わせているのか? それとも会わせていないのか――?
第7回 山崎庸子さん(仮名・36歳)前編
「大学卒業後に法科大学院(ロースクール)に行ったり、出産したりということがあって、司法試験を目指すと決めてから合格するまでにトータルで10年以上かかったでしょうか。新司法試験は2度の不合格の後の3度目で合格しました。もともと弁護士業と子育てを両立するつもりでした。先に子宝に恵まれたんです」
都内某所。とある法律事務所にて、山崎庸子弁護士に話を聞いていた。彼女のもとを訪れたのは、これまでに彼女が担当した離婚事件についての概略を聞きたかったわけではない。山崎さん自身のシングルマザー体験について伺いたかったからだ。
■大学時代の同級生との別居結婚
「出会いは大学生のときでした。彼は大学1年生のときの同級生。お互い、地方から出てきて一人暮らし。そういうカップル、周りにはたくさんいました。最初は友だち付き合いでしたけどね。夫婦別姓のこととか女性の社会進出とか教育問題といった社会問題のスタンスがしっくりくるということもあって、急接近していきました」
それぞれ大学を卒業し、山崎さんはロースクール、彼は大学院を卒業後に公務員とそれぞれの道へ進むころに結婚する。
「彼は東京で就職しました。一方、私は司法試験合格を目指し、北陸で受験勉強。初めての“遠距離”でした。彼の住む東京ではなく、北陸にしたのは、奨学金がもらいやすかったからです。もし出産したとしても、この地域は待機児童問題とは無縁のようでしたし」
山崎さんは、ほどなく妊娠。おなかが大きくなっていく中の受験生活であった。
「受験勉強よりも、ママ友づくりに必死だったかもしれません。それがないと子育てのやり方もわからないと思ったんです。私の予定日は2月末。その時期は臨月で、ロースクールの期末試験に向けて勉強しているころ。期末試験を無事に終えられるかな、終えてから産めるかな、とそんな感じでした。
別居しながらも夫とは夢に向かって一丸となって頑張っていました。それは『庸子が司法試験に合格すれば生活の形が好転する。だからお互い頑張らなきゃ』というものです。私は日に日に大きくなるおなかを抱えながら受験勉強をする生活でした。一方、彼は彼で職場にかけあって、2カ月半という長期の育児休暇を許可されました。男性の育児休暇取得率は今でも数%しか実現していませんからね、まさに先駆けですよね。そんな意識の高い彼が私は頼もしかった」
山崎さんは司法試験という夢を諦めず出産もする。夫は育休をとって専ら子育てに励む。別居しながらも、2人は共通の夢に向かって挑戦を重ねていた。関係は良好だった。