梅沢富美男や坂上忍が怒る理由ーー泌尿器科医が語る「オジサン」とホルモンの関係
女性の更年期では、女性ホルモンの分泌量が急激に減少するのと比べて、男性のテストステロン減少のスピードは緩やか。本人も更年期のせいだとは気づかないままいつも怒っているとなると、しんどいのではないか。もちろん、それによってとばっちりを受ける周囲にとっても困りものだが……。
「実は私自身は、LOH症候群で気難しくなるタイプの男性に、あんまりお目にかかったことがないんですよ。このタイプは家庭で妻から無視されがちなので、その症状に自分も周囲も気づかずじまいで、なかなか泌尿器科医で診てもらうことにならないようです」
生きづらくなっている男性ほど治療につながらないとは皮肉な話だが、実際に泌尿器科では、LOH症候群の男性にどんな治療を行うのだろう?
「主に、男性ホルモン補充療法ですね。活力を補給する手段として、私たちは非常に重視しています。それから、勃起障害の治療薬を使うことも……」
勃起障害の薬と、オジサンの怒りっぽさに関係が!?
「ええ、ありますよ。LOH症候群の症状として性機能障害が出ることがありますが、治療や生活習慣の改善によって、勃起・射精が復活すれば、それだけで男性としての自信が回復します。その自信が脳を活性化させ、テストステロンを増やすホルモンを放出させ、結果的にテストステロン値が高まるという、いい循環を生みます」
■挿入だけに頼らず、触れ合い、語り合うことも大事
では、そうしたオジサンと女性との関係はどうだろう? 永井医師は、著書の中で「カップルで長生きしよう」と提唱し、そのためには熟年になってもセックスを楽しむことが大事として、「セックスを楽しむ10カ条」を挙げている。
・言葉を大切にする
・ゼリーを使う
・アダルトグッズを使う
・五感を駆使する
・時にはホテルを使う
・ED治療薬を使う
・下半身にいいサプリを飲む
・週2を維持する
・挿入にこだわらない
・手や口すべてを使って愛撫する
男女ともに、若いころと違って体が思うようにいかない部分は、薬やサプリ、アダルトグッズやゼリーをうまく取り入れれば補える。男性機能の回復も大事だがそれでも勃たなくなる日はいつかくる、女性も次第に「物理的に受け入れにくく」なる。そのためにも「挿入にこだわらない」「手や口すべてを使って愛撫する」セックスを楽しめるようになっておきたい。
「性機能に卒業はありませんし、これを高めることはアンチエイジングにもつながります。でも一方で、挿入だけに頼らず、触れ合い、語り合うことも大事にしていかなければならないのが熟年期です。寝室を別にするのは危険。セックスしなくてもいいから、お互いの肌に触れてほしいですね。朝起きたときお尻をなでたり、台所ですれ違うとき胸にタッチしたり……と日常の中でこまめに触れ合うカップルは、すてきなシニアライフを過ごせるでしょう」
触れ合いも語り合いも、男性のテストステロンが下がるに任せ、怒りっぽく狭量になってはかなわないだろう。それ以前に、ひとつ屋根の下で暮らすのも苦痛になるかもしれない。日本人の健康寿命は伸びている。長いシニアライフをパートナーと、ときにセックスもしながら過ごすためには、パートナーにLOH症候群の兆候が見られたら、女性の側からも治療を勧めてほしい。
「まずは病院に来ていただき、焦らず、怒らず、落ち込まずに治療を続ければ、穏やかで朗らかなシニアライフを夫婦ふたりで送れますよ」
そう語る永井医師自身が、理想的なシニアライフを体現しているような男性だ。もちろん気難しいオジサンが多い裏には、ジェンダーギャップなど社会的要因もあるだろう。しかし医学的に解決できる問題も多いのであれば、まずはLOH症候群であることを認識し、治療につなげていくほうがオジサンにとっても、その周囲にとっても幸せなのである。
(三浦ゆえ)