詩織さんがレイプ被害を訴えても、“110年ぶり刑法改正”でも変わらない、被害者への視線
――被害者の中には、それが性被害であることを知らず、加害者が顔見知りであると特に「単なる男女のいざこざ」と捉えてしまう人もいるようです。どうすれば、その行為が犯罪であると広められるでしょうか?
望月 義務教育の中で教えていくことだと思います。人の嫌がることをしてはいけないとか、自分が嫌なら性的なことはしなくていいといった、基本的な人権教育や性教育を行っていく必要があります。
10年ほど前の話ですが、韓国に行った際に視察した性暴力被害者支援団体は、教育活動も行っていました。例えば「普段下着で隠れているパーツに触るのはいけないこと。触られたら嫌と言っていいんだよ」といった教育をしているのですが、日本にはそういった教育ってほとんどないですよね。
――きちんとした性教育を義務教育の中に入れたがらない、お偉いさんも多そうです。
望月 東京でも石原慎太郎都知事のときは、そんな雰囲気でしたよね。だいぶ前の話ではありますが、ある県で高校生の妊娠が問題になっていたとき、性教育をきちんと行ったら、望まない妊娠が減ったというケースがありました。
子どもは何も知らない無防備な状態ですが、成長するに従って、性的なことに興味が出てきます。一方で、大人は「子どもが妊娠するなんてありえない!」と、子どもの性に対して目を向けたくないのだと思います。実際には、望まない妊娠という現実があります。現在は初めて性交する年齢も下がってきているので、現実と向き合って、避妊の仕方を教える等の現実的な対処をしていかなければならないのに、遅れているなと感じます。
――性被害に関する世間の意識を変えていくためには、どうすればいいでしょうか?
望月 そもそも、そのような被害があるということすら、あまり意識されていません。多くのマスコミは「強姦」ではなく「暴行」と書いて、生々しいことを伝えません。でも、警察に届けられているだけでも、年間1,200~1,500件の性犯罪が起こっています。事件が起きていることと、誰でもいつ被害に遭うかわからないということを、もう少し伝えていけたらと思います。
また、被害を受けた方の痛みが全くわかっていない人も多いと実感しています。それこそ、「減るもんじゃないんだから」といった昔の考え方を持っている人もいます。被害者がどれだけ大変なのかを、教育の中で伝えておきたいですよね。
(姫野ケイ)
望月晶子(もちづき・あきこ)
NPO法人レイプクライシスセンターTSUBOMI代表。諏訪坂法律事務所所属弁護士。