横澤夏子、結婚報告に見る“学生時代のカースト”に縛られ続ける女の悲哀
羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の芸能人>
「今後は、私の凝り固まっている結婚という理想にとらわれず」横澤夏子
(結婚報告ファックス、7月20日)
最近のバラエティ番組は、“人気者の闇”を取り上げる傾向があると思う。
例えば、「CanCam」(小学館)専属モデル・堀田茜は、『友達+プラス』(TBS系)で、休日は“ぼっち”で焼肉に行く姿を披露していたし、フリーアナウンサーの田中みな実は『もしかしてズレてる?』(フジテレビ系)で、「友達とかは、ドタキャンするかもしれないけれど、予約は裏切らない」と仕事の空き時間に、ぎっちぎちに美容やワークアウトの予定を入れていることを明かしていた。正直、1人で焼肉を食べたり、1人で美容めぐりをすることのどこが“闇”なのか、いまいちよくわからないが、視聴者がリア充を嫌う今、“闇”を積極的に見せる姿勢は、タレントとして必要だろう。
ビジネスとしての“闇”の披露が多い中、私は、横澤夏子の“闇”は作り物でないように思えて仕方がない。いろいろなバラエティ番組で、 せっせと婚活パーティーに通っていることを公言し、彼氏ができると『バイキング』(フジテレビ系)で「デートで行きたい場所は区役所、欲しいものは判子」とプレッシャーをかけまくる発言をするなど、結婚に関する思い入れが尋常ではないからだ。
番組名は忘れてしまったが、安室奈美恵が第一次ブレークを果たした90年代、当時の所属事務所社長が「女性タレントは、売れたら付き人を2倍に増やす」と言っていたのを覚えている。社長いわく、女性タレントは急に人気者になると、人気者でいるプレッシャーに耐えかねて、結婚や引退を言い出すことがあるそうだ(ちなみに、男性は売れても精神的に不安定にならず、ただただ調子に乗るそうである)。なので、付き人を増やし、「大丈夫」「応援している」と、態度で示す必要があるという。
横澤も、売れたプレッシャーから逃れるために今回結婚したのかと思ったが、売れない時から婚活パーティーに通っていたそうなので、結婚と売れっ子になったことは関係ないのだろう。また、横澤の結婚への執着は、“結婚式へのあこがれ”とか“相手のことが好きすぎて、頭がお花畑”といった類いの、若い女性にありがちな思考ともちょっと違う。まるで、大学の推薦入学や、予防接種のように「早いとこ済ませておいた方がラク」「しておけば安心」とでも言いたげな印象を受けるのである。
『文藝芸人』(文藝春秋)に掲載された横澤の「私が同窓会の帰りに泣く理由」は、私の疑問を解き明かしてくれた。横澤は自らを「コンプレックスの塊」「自分と友達をいちいち比べてしまう」と分析している。売れっ子となり、きっとみんなが自分をうらやましがってくれると思ったら、周囲の反応はそうでもなく、傷ついたとも書いている。