彼のことは嫌いじゃない。友達ならいいが、結婚相手ではなかった【別れた夫にわが子を会わせる?】
『わが子に会えない』(PHP研究所)で、離婚や別居により子どもと離れ、会えなくなってしまった男性の声を集めた西牟田靖が、その女性側の声――夫と別居して子どもと暮らす女性の声を聞くシリーズ。彼女たちは、なぜ別れを選んだのか? どんな暮らしを送り、どうやって子どもを育てているのか? 別れた夫に、子どもを会わせているのか? それとも会わせていないのか――?
第5回 広瀬ちあきさん(仮名・30代)後編
2歳年下の男性と、大学を卒業して3年後に、できちゃった結婚した広瀬ちあきさんは、仕事の付き合いと称してキャバクラや風俗に行っていた夫から、経済的DVや言葉のDVを受ける。ある朝、家事も育児もせず遊び歩く夫を問い詰めたところ、足を蹴られたため怖くなり、警察を呼んだ。夫が警察に話す言い分が自分と真逆だったので、法テラスに相談すると、弁護士から「離婚できる」と言われて我に返り、夜逃げしようと決意する。
■週末の夜に彼が遊びに出かけたとき、荷物をトラックで運び出した
――いつ逃げたんですか?
「週末の夜に彼が遊びに出ていったのを確認した瞬間に、『今出て行った。だからお願い、来て』って、友人や親に連絡しました。地元の友達には、私が予約していたレンタカーのトラックで来てもらって、手分けして荷物を積み込んでいきました。運び出した荷物は、洋服だとか、実家から持ってきていたものばかり。大きいものといえば、子どもを乗せられる自転車ぐらい。お金を出し合って買ったものとか、冷蔵庫やたんすなどといった大型の荷物は持ち出さなかった。ケチな彼に“泥棒”と言われたくなかったので。
3時間後ぐらいでしょうか。荷物を積み終わって、忘れものがないか確認していたとき、上の子が『出ていきたくないの!』って大泣きして、バタバタ暴れ始めたんですよ。上の子からしたら、保育園で新しいお友だちたちと仲良くできるかなって思ってた時期に、急に引っ越すわけです。つらかったと思います。私は『ごめんね』って声をかけて、なだめすかすしかありませんでした」
――彼は、いつ気がついたんですか?
「朝帰りの後だから、翌日の朝です。彼が実家に来ました。ドンドン! って激しくノックされ、『そこにいるんなら開けろ』って叫んでる声が聞こえました。『家に帰ったら誰もいないし、荷物がない』ってことで慌てたんでしょうね。だけど、彼のノックは完全無視です。『弁護士から連絡が行きます。私には連絡しないでください』って一筆置いて家を出ていったので。
その後、会社にメールや電話が来たりはしました。『嫁に連絡が取れないんだけど、連絡を取ることはできますか?』って。何食わぬ、いい人のふりをしてね。娘たちを通わせていた保育園にも来ていたようで、後日連絡すると、『その後、何回か来たわよ』と保育園の先生に言われました。実家付近で待ち伏せされなかったのが幸いです。
新しい保育園を見つける暇もなかったので、子どもたちは空いていた託児所に預けました。といいますか、託児所が空いていたから夜逃げしたともいえますね。8時から18時まで。2人合わせて月8万円ほどかかりましたけど、緊急事態だったので背に腹は代えられませんでした」