デキ婚の夫は家庭を顧みず女遊び。蹴られた恐怖で夜逃げを決意【別れた夫にわが子を会わせる?】
『わが子に会えない』(PHP研究所)で、離婚や別居により子どもと離れ、会えなくなってしまった男性の声を集めた西牟田靖が、その女性側の声――夫と別居して子どもと暮らす女性の声を聞くシリーズ。彼女たちは、なぜ別れを選んだのか? どんな暮らしを送り、どうやって子どもを育てているのか? 別れた夫に、子どもを会わせているのか? それとも会わせていないのか――?
第5回 広瀬ちあきさん(仮名・30代)前編
「取っ組み合いのけんかをしたり、すさまじい罵倒をし合ったり。そこまで私の醜いところを見せた人って、今までの人生の中で彼しかいない。だからこそ、ある意味安心して会える人なんです。戦友というか、出来の悪い弟というか。彼と結婚したのは、大学を卒業して3年目のこと。デキ婚でした」
理系の派遣会社で働いているという広瀬ちあきさんは、埼玉県にある実家に住み、10代前半の子ども2人を育てている。小柄でてきぱきとして、それでいておしゃれな女性という広瀬さんの第一印象からは想像がつかない夫婦生活が、かつてはあった。
■双方の親が仲違い、結婚式もせず、出産直前に入籍
――お相手の方は同僚ですか? どこで知り合われたんですか?
「2歳下の彼と知り合ったのは、私が就職した年のことでした。女子会に乱入してきた男子たち、その一人が彼でした。そんな初対面ですからね、邪魔くさいな、というのが第一印象(笑)。有名人で似てるのは、嵐の二宮和也くんかな。気がつけば付き合っていて、毎週末を2人きりで過ごすようになりました」
――そのまま関係は続いたんですか?
「はい。彼も社会人になりました。営業職として入社して1年目で年収600万円。すごく口がうまいので、全国トップの成績だったとか。
そんな折、デキてしまったんです。勢いとか若気の至りと言われればそれまでですけどね。そこで口を挟んできたのが、彼の母親です。『堕ろして』と私に直接は言ってこないですけど、『結婚するな』と彼にずっと言ってたようです。そんな意向は無視して、2人で出産と同棲を決めました。住んだのは私の実家のある埼玉。彼は当初、嫌がっていましたけど、最後は折れてくれました。
問題は、双方の親の仲たがいです。うちの親が『娘さん孕ませてすみません、って挨拶があってしかりなのに、そういうのが一切ない』と言えば、彼の母親は『関わりたくない』って言うんです。そんな感じでこじれてしまって。関係はぐちゃぐちゃです」
――それで、出産はどうなったんですか?
「出産の1カ月前ぐらいで産休に入りました。未婚の母になるつもりはなかったので、『籍を入れなきゃ、一生あなたと会わない!』って強く言ったところ、生まれる2日前になって、ようやく籍を入れてくれました。そんなドタバタですから、結婚式どころではなかった。結局やらずじまいです。
出産日は大幅に遅れました。予定日から6日待っても、まだ出てこなくて。陣痛促進剤やバルーン[筆者注:子宮収縮を促す器具。風船状のゴム球を膣から挿入して使用する]を使って産むことになりました。今思えば難産でした。いきんでるうちに、気分が悪くなって嘔吐してしまったんです。時間的には大したことがなかったんでしょうけど、産み終わったときには精根尽き果てていました。彼は立ち会わなかった。というか、連絡しそびれて……」
――出産後は、どのような生活だったんですか?
「(産褥期は)実家で1カ月ほど過ごしました。回復が遅く、1カ月を過ぎても、ヨタヨタしていたんです。産着などのベビー用品は、生まれる前に最低限、自分で買ってあったり、生まれてから親に買ってきてもらったり。出産するまでは籍入れる入れないでもめてたので、『しっかり選んで』とか『備えなきゃ』とか、それどころじゃなかったんです。その間、彼は1人暮らし。親子3人で住むために、先に都内にマンションを借りて、そこに住み始めていました。実家へ娘を見に来たかって? いいえ、一度も来ませんよ」