カルチャー
ひとつ屋根の下

家族の物を勝手に捨てる、その是非は? コレクター、ミニマリスト、弁護士の見解

2017/07/10 21:44
Photo by y_ogagaga from Flickr

 7月1日に放送された土曜スペシャル『今日で捨てましょう!』(テレビ東京系)のあるシーンが、物議を醸している。その内容とは、「父親の所有する手付かずのプラモデル『ガンプラ』を捨ててほしい」という母娘と、「捨てたくない」という父親をめぐるもの。父親は「いつか作る機会が来ると思う」と懇願したが、娘は「4つ捨てる」と主張。父親は「なんでこんなに責められなきゃいけない」と不満を漏らしていたが、 最終的には1つ捨てることでまとまった。

 番組では最終的に父親の同意を得ていたが、もし家族のものを無断で捨てた場合、罪に当たる可能性はあるのだろうか? また、物を捨てられない人の心理とは? まずは前者について、アディーレ法律事務所の小堀信賢弁護士に聞いた。

「家族の持ち物を勝手に捨てることは、器物損壊罪(刑法261条)に該当します。仮に、妻が夫から預かっていた物を夫に無断で捨てた場合も同様です。所有物を捨てられた家族が、その物を占有(保管)していないときでも、捨てられて回収不可能になったのであれば、所有権が害され『損壊した』といえることになるでしょう。 これらの刑罰としては、3年以下の懲役、30万円以下の罰金、1,000円以上1万円未満の科料、いずれかに処される可能性があります。器物損壊罪は、被害者の告訴がなければ公訴を提起できない親告罪ですので、被害者が告訴しなければ、刑事裁判にはなりません。また、事実上、警察による捜査が行われることもないでしょう。ただし、民法上の損害賠償責任については、また別の話で、被害者が、告訴まではしないが賠償は請求するとして民事裁判を起こした場合、賠償を命じる判決が行われる可能性があります」

 では、番組に出てきた父親のように、物を集めて捨てられない人は、どのような心理なのだろうか? 『ぼくらの60~70年代宝箱』『ぼくらの60~70年代熱中記』(共にいそっぷ社)の著者で、昭和の漫画・玩具コレクターである黒沢哲哉氏は次のように語る。

「もし、番組のように家族から『捨ててほしい』と頼まれたら、家族の言い分を聞き入れて、すっぱりと捨てるか、たとえ家族が断絶しても断固として断るかの二択しか私は考えません。番組のように1個だけ捨てるというのは、コレクターの気持ちが傷つき、家族関係はぎくしゃくし、家はまったく片付かないという最悪の判断です。番組では、プレミアが付かないガンプラと言われていましたが、市場価値がないからこそ散逸しやすく、二度と集まらない物なのです。コレクターにとってコレクションとは、金銭的価値の確認ではなく情熱の報酬なのです」

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