夫の人生に何も間違いはなかった。今も彼と娘との関係は友好的【別れた夫にわが子を会わせる?】
『わが子に会えない』(PHP研究所)で、離婚や別居により子どもと離れ、会えなくなってしまった男性の声を集めた西牟田靖が、その女性側の声――夫と別居して子どもと暮らす女性の声を聞くシリーズ。彼女たちは、なぜ別れを選んだのか? どんな暮らしを送り、どうやって子どもを育てているのか? 別れた夫に、子どもを会わせているのか? それとも会わせていないのか――?
第4回 岡田奈緒さん(仮名、40代)後編
イベントコンパニオンや役者などとして活動していた岡田奈緒さんは、20代後半のとき、同じ舞台で知り合った10歳ほど年上の舞台俳優と結婚。翌年、娘を出産し、子育てに専念していたものの、娘が1歳になると、将来的なことを考えて不安が尽きなくなり、夫とすれ違い始める……。夫と別居しようと、関東近隣の団地から都内の実家所有のマンションに引っ越すも、夫がついてきてしまう。
■価値観を押し付けたのは、たぶん私
――東京での暮らしは、どんな生活だったんですか?
「引っ越したのは、実家が所有しているマンションの、約13畳のワンルーム。ちっちゃいキッチンとちっちゃいお風呂がありましたけど、居住用というより事務所用の物件でした。そんな家ですから、夫の部屋は当然ありません。すると、余計ゴロゴロしてるのが目につくんです。でも、東京に来て環境が変わるので、夫が一念発起してくれればという願いがありました」
――一念発起とは?
「20代の頃には大人気だった夫も、すでに40代。俳優をやるにしても、別の仕事をするにしても、よほど改善をしなければヤバいわけです。だから、『何がしたいのか考えてみなさい』って、夫に言い聞かせてました。だって、そうでしょ? 子どもができてお金がいるというのに、どうやって稼いでいったらいいかとか、当然あるべき将来の青写真が、夫になかったんですから。
あるときは、保険会社の人生設計相談を受けてもらったりもしました。そこでは、ライフプランを書かされるんですが、夫の書いた表に『何年後に家を買って』とかいう青写真的なものが、まったく出てこなかったんです。これじゃちょっと老後は背負いきれないな、ダメだなって。ガッカリしました。
一方で、夫にとっては、私のそうした言動がストレスなんです。夫は、ご飯が食べられればいい。借金もしない。お金がまったくないわけでもない。お金はないんですけども、生きてはいける。月20万円ぐらいあれば、家族3人か4人生きていけるという人だったので、何を言われているかわからない。『子どもがいて楽しく暮らせればいいのに、何がいけないんだ』というすれ違いです。
だから夫のモラハラとかDVというのとは真逆。価値観を押し付けたのは、たぶん私ですね。夫は現状で十分幸せなんですもの。夫の人生に、何も間違いはなかった。かわいそうに。だって夫からしたら、借金もないのに、なんで責められなきゃならないんだってことですよね」