「LARME」元編集長が「bis」復刊! キラキラ女子雑誌が「性と死」の匂いがするバイブルに大転換
衝撃のニュースが入ってきました。男ウケを度外視したガーリーな世界観を表現し、発行部数20万部を超える人気を博していた異例のファッション誌「LARME」(徳間書店)。そのカリスマ編集長を突如辞任し、半年以上沈黙を続けていた中郡陽菜氏が、2006年から休刊していた「JJ」(光文社)の妹誌「bis」を編集長として復刊させたというではありませんか。
従来の「bis」はお嬢様女子大生の読者モデルが多く活躍し、男ウケを目指すキラキラ系女子向けのファッション誌でした。一方で新生「bis」は、「おしゃれ好きな20~25歳の女性」がターゲットで世代に変化はないものの、志田未来、橋本愛、田中真琴ら有名タレントが誌面を飾り、「少女の心を持ちながら、大人の女性になるためのファッションバイブル(Lady with the girl’s heart.)」というコンセプトの雑誌とのことです。大きく方向転換していそうですね。
志田未来がカバーを飾る今回の号は、9月に隔月刊となる前段階の「プレ創刊号」。さて、一体どんな内容になっているのでしょうか? 早速チェックしていきましょう。
<トピックス>
◎Never mind 何でも無い
◎汚れきった天国
◎ヘルシーサマーなスイッチ着回し対決
■よくわからないが、すごい世界観
目次を眺めていて真っ先に気になったのが、若手アーティスト・UMMMI氏が書いた「汚れきった天国」というタイトルの小説です。読んでみると、「例えば生牡蠣が食べられるあの居酒屋の裏で長いほうのキスをしたことや、酔っぱらった勢いでセックスをした普段だったら入らないようなちょっと高級なホテル(略)」「アタシはきっとこの街でも、キスをするしセックスをするし、おそらく交差点に飛び込む(略)」などのフレーズが1ページ目から目に入り、度肝を抜かれました。「LARME」ではセックスの「セ」の字も出てこなかったのに、「bis」ではいい意味で振り切れていますね。
ほかのファッションページでも、夢野久作や小林エリカ、佐々木新らの小説やショートストーリーが題材になっており、なんとなくカルチャー色が強い、独特の世界観を醸し出しています。本文より一部を抜き出すと、「彼女を殺したのも空想です」「そうして先に死んだのは彼女の方だった」「周囲の人や動物がなぜか壮絶な死をとげてしまうの」などとあります。なんだかわからないけど、すごいです。ほとんどのファッション誌では仕事や恋愛などの日常生活がポジティブなタッチで表現されるなか、「死」という不穏なワードが連発されるこの雑誌は非常に特殊なのではないでしょうか。
■ただのガーリーではなく、「退廃的ガーリー」へ?
ただし、そこに登場してくるファッションはあくまでガーリー。表紙を含め雑誌全体は黒・白・ピンクがメインカラーですし、コーディネートもスカートが多めで、花柄やギンガムチェックなど、ガーリーな柄が目立ちます。ただ、甘かわな「LARME」と比べると、少し落ち着いた色合いになっています。例えば同じピンクでも、「bis」ではくすんだピンクやごく薄いピンクベージュなどが多い印象です。
中郡氏は、ウェブサイト「WWD JAPAN」のインタビューで、この雑誌全体のテーマは「退廃」、つまり「新しいものばかりが良いものじゃないということ」と語っています。退廃とは本来、「道徳や健全な気風が崩れること。その結果の病的な気風」という意味なので、これは結構思い切った解釈なのでは。「LARME」時代から、古典作品を独自の解釈でガーリーに表現してきた中郡氏らしいといえるでしょう。ただし、どちらも「ネガティブ」や「非・メジャー」などという意味では一致しており、誌面にくすんだ色やダークトーンが多く登場し少し陰鬱な雰囲気が漂うのも、「死」というワードが連発されるのも、なんとなくは納得できます。
またそのテーマに合わせてか、誌面にはビンテージもののアイテムも多数登場。20~25歳の女性向けの雑誌なのに、10~40万円くらいのワンピースが平気で何度も出てくるのです。これ、ターゲットの9割はなかなか手が届かない価格でしょう。
さらにはトレンドのコーディネートやアイテムを紹介するページで、「すべてスタイリスト私物」という箇所も。まるで「センスのないやつには読んでもらわなくて結構!」とでも言わんばかり。雑誌のターゲットが「おしゃれ好きな女性」ということもあり、こういったページでは、登場アイテムと同じものしか買えないような、“おしゃれじゃない”女性は完全に切り捨てられています。