「GINGER」にとって男は“いいね!”要員? 「あこがれられたい」という燃え盛る欲望
さらに気になったのは、「白T」の「夏のシーン別着こなし見本帳」です。さながらSNSの投稿のように、シーン別の「白T」コーディネートが全部で50個並べられているのですが……「@大学サークルOG会」「@人数合わせの合コン参加」「@地元のお祭りで夏気分」「@友人とフリマ開催」「@親戚一同の食事会」「@会社仲間とBBQ」「@親友と一泊温泉旅行」「@ホムパにお呼ばれ」「@青山のライヴハウスへ」「@週末はクラブで夜遊び」「@テラスカフェで女子会」「@友人の引越し祝いに」「@ママとホテルランチ」「@レセプションパーティー」「@野外フェスで熱狂」「@湘南ビーチパーティー」「@後輩とビアガーデン」「@朝までカラオケ女子会」って、「GINGER」女子、忙しすぎでは!? 服は「白T」1枚でよくても、これでは体がいくつあっても足りません。
それに気になるのが、こうした夏のイベントごとに、男の影があまり見えないこと。「朝活」に参加したり、「英会話スクール」に通ったり、「社外セミナー」を受けたり、ご褒美に「エステ」や「ヘッドスパ」に行ったりと、自分磨きのイベントごとには事欠かないのに、男との予定は、「@遠出ドライブデート」「@GINZA SIXデート」「@のんびり公園デート」「@久々の遊園地デート」と、わずか4パターンのみ。「GINGER」女子の関心事は、男より自分磨きにあるようです。
もともと「GINGER」は、恋愛に重きを置いていない女性誌ですし、男より自分磨きを重視するのは決して悪いことではありません。ただ、この夏の予定一覧を見ていると、なんとなく「GINGER」女子の“他人からあこがれられたい”という強烈な欲望を感じてしまうのです。彼女たちにとっての“恋愛”は、ほかのキラキラしたイベントと同じように、SNSに投稿して他人から“いいね”をもらいたい要素の1つに過ぎないのかも……と思ってしまいました。
■「GINGER」女子の結婚観
そんな「GINGER」の恋愛観を垣間見たところで、今月号の巻末には“結婚”特集がありましたが、そもそも結婚願望があったことに驚きです。「結婚に対して冷静なアラサーも多い」と聞くけれど、「こんな夫婦になれるのなら結婚してみたい」という趣旨の企画だそうで、題して「私たちも、こんな夫婦になりたーーーい!」。さすが「GINGER」女子。結婚に対しても“他人にあこがれられたい”というモチベーションが見え隠れしています。
年代別の「憧れてやまない素敵な夫婦」4組へのインタビューを見ていきましょう。初めに登場する小暮夫妻は、人気写真家とイラストレーターの60代ご夫婦。相模湾が見渡せるサンルームが自慢のご自宅は、巷で話題の“丁寧な暮らし”そのものです。アラサーである「GINGER」女子の“ちょっと上世代”として紹介されるのは、スタイリストの工藤満美さん、ヘアメイクアップアーティストの千吉良恵子さんのご夫婦。生活感のないおしゃれな自宅で撮られたツーショット写真は、確かに絵になっています。そして極めつけは、bonpon511夫妻。2人は一般のご夫婦なのですが、夫婦コーディネートを投稿したインスタが話題沸騰中で、なんとフォロワー数は45万人を超えているとのこと。
どのご夫婦も仲が良さそうで、おしゃれで、思わず“いいね”を押しそうになりますし、「GINGER」女子たちが「こんな夫婦になりたーーーい!」とあこがれる気持ちもわからなくはありません。しかし当たり前のことですが、誌面に載っているのは、夫婦の“表向きの部分”だけ。それに、こうした夫婦には、一朝一夕でなれるものではないでしょう。「GINGER」は、「SNSで“いいね!”をもらいたい」のと同じ感覚で、結婚を捉えているように見受けられるのです。
「GINGER」の読者層は、都会で働き、経済的に自立しているアラサー女子ですが、なぜか恋愛や結婚などの私生活についての具体的なビジョンに欠けているのではと、以前から指摘してきました。彼女たちの行動基準が“他人よりちょっと抜きん出たい”“他人に羨ましいって思われたい”というプライドに起因しているのならば、自分自身を生きづらくさせているような気がしてしまうのですが……。
(橘まり子)