あの「バブルの女帝」を獄中で介護してました――老人ホーム化する刑務所事情
覚せい剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。
■行き場がなく、ムショで年を重ねていく人は多い
最近は「障害」ではなく「障碍」と書く傾向もあるのだと、初めて知った瑠美です。
私には、かわいいかわいい息子たちがいてますが、最近はホンマ子どもが減りましたね。私は子どもがたくさんいて、お年寄りが元気に長生きできる社会がいいと思うのですが、これからどうなっちゃうんですかねえ。
もちろん、ムショの少子高齢化も例外ではありません。若い刑務官が不足する一方で、お年寄りの収容者はどんどん増えていて、ムショはすでに老人ホーム化しているのです。
ちょっと前ですが、生活保護をもらえなくて、下関駅に火をつけて有罪判決を受けたおじいさんが84歳で出所されました。なんと放火の前科が10件だそうです。知的障碍があって、「行くところがなくて火をつける→ムショ」の繰り返しで、人生の半分以上を獄中で過ごされたとか。今は牧師さんが面倒を見ておられるそうで、よかったですね。
このおじいさんの例は極端としても、行き場がなくてムショに入って年を重ねていく人は多いです。障碍があって働けないとなると、もう懲役しかないというのもあります。
私が務めた和歌山や岩国の刑務所では、体が不自由な方も一緒に作業していました。こういう人たちは障碍が軽めなんでしょうが、夜は独居房でしたね。起床時の布団上げから洗濯や掃除、食器洗いなどはスピードが勝負の「戦場」モードですから、障碍があると「足手まとい」とされて、イジメに遭ってしまうからです。
■ホリエモンもムネオさんも高齢者を介護
「懲役」とは、「所定の作業」を行わせる刑罰で、皆さんのイメージは工場でいろんなもの(刑務作業品ですね)を作ったりする感じかと思いますが、ほかにも施設内の清掃、受刑者や刑務官の食事の用意、差し入れされてくる図書の整理なんかも「作業」となります。そして、障碍者や高齢の受刑者の介護というのもあります。これは誰にでもできるわけではなくて、受刑者の作業としては格上なんですよ。ホリエモンこと堀江貴文さんや鈴木宗男さんもムショでは介護をしたはったそうです。元国会議員の山本譲司さんが書かれた本『獄窓記』(新潮社)には、刑務所内での介護の体験をシモの世話のことまで生々しく描かれていると編集者さんから聞きました。