サイゾーウーマンカルチャースポット性犯罪者は生きるために再犯する カルチャー 映画『SCOPE』上映会レポート 性犯罪者は生きるために再犯するーー厳罰化で被害者は減るのか? 2017/06/03 15:00 性犯罪性暴力 厳罰化が進むと、再犯が増える? 榎本クリニック精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さん 主人公の篤夫は、孤立している。右手の甲にはSCOPE法対象者であることを示す数字の刻印があり、それを悟られないよう、常に人との間に距離を置いている。 斉藤 孤立も、この映画の大きなテーマですよね。身柄引受人がいないところを見ると、篤夫はおそらく満期で出所しています。家族から受け入れられず、過去を隠しているため誰ともつながりが持てず、仕事もなく、SCOPE法にがんじがらめにされながら、どんどん社会から排除されていく……。 平山 刑法が改正されれば、強姦罪改め強制性交等罪の法定刑は、懲役5~20年になります。厳罰化は、「性犯罪を許さない」と社会全体にメッセージを発信していくことでもあるので、それ自体は評価できます。が、刑期が長くなると、その分、社会と隔絶している時間も長くなり、出所後に孤立しやすくなります。社会の中で彼らをどう扱っていくか、つまり“社会内処遇”にどうつなげるかを、同時に考えなければいけませんよね。 斉藤 同じ犯罪を何度も重ねている人ほど、孤立したとき、それまでに慣れ親しんできた犯罪に再び手を染めてしまう傾向があります。窃盗なら窃盗、性犯罪なら性犯罪。決して許されないことですが、これは彼らとしては“生きるため”の手段です。それをすれば刑務所に戻れますから。言うまでもありませんが、性犯罪の再犯とは、新たな被害者を生むということです。それを防ぐためにも、平山先生がおっしゃった社会内処遇の枠組みの中で、継続した治療が不可欠です。 卜部 受け皿が何もないまま刑罰だけを重くすることについては、もっと議論が必要ですね。人は誰しもひとりでは生きていけなくて、社会も彼らに関わっていかなければならないーーということが、もっと広く知られてほしいです。 次のページ 性暴力の実態を知ることが、被害を減らすことにつながる 前のページ123次のページ Amazon 性犯罪者の頭の中 (幻冬舎新書) 関連記事 「性被害は被災と同じくらい大変なこと」被害者支援の立場から見た、性暴力を取り巻く社会の現状「それはセクハラです」と声を上げ続けるしかない 刑法改正による強姦罪の厳罰化相手がセックスに合意していたと思ったから無罪? 強姦罪の立件が難しい理由痴漢はペニスだけの問題ではない 誤解している加害者の実態これ以上、性犯罪被害者を出さないために 加害者の治療と家族の役割