福原愛は、なぜ急速に嫌われたのか? メディアが作り上げた“泣き虫愛ちゃん”の弊害
卓球の福原愛選手が、急激にアンチを増やしている。2016年9月に、台湾のイケメン卓球選手・江宏傑と結婚したことがきっかけのようだ。
2人の結婚報道は同年、リオ五輪直前の4月。この頃はまだ、世間は祝福ムード一色だったのだが、リオ五輪後に一変した。福原選手は、中国版TwitterといわれるWieboで、夫とのツーショットや、結婚指輪をはじめとする高級アクセサリー、時計、バッグの写真(しかもそれらは、妙に目立つ構図で撮影されている)、はたまた自分が美しく見えるように加工した自撮りを多数公開。さらに日本と台湾での結婚会見、台湾と東京ディズニーランドで披露宴を開くなど、度重なる“幸せのおすそ分け”を行い、それに満腹感を覚える人が多発したのだ。先日、福原選手がTwitterを新たに開設した際も、ネット上では「幸せアピールするため?」「おなかいっぱい」とアンチの声が続出していた。
かつて、“泣き虫卓球少女”だった福原選手が、オリンピック選手、メダリストへと成長していく姿を、日本中は見守り、応援し続けてきた。そんな国民的人気者だったはずの彼女が、類を見ない速さで嫌われ者に仲間入りしてしまったのには、どんな理由があるのだろうか。
私たちはおそらく、彼女の“卓球以外の部分”に、そもそも関心がなかった。しかし、テレビを通じて「小さい頃から、おしゃれや恋愛より卓球に身を投じてきた、華やかさはないものの一生懸命で応援したくなるアスリート」というような刷り込みがされていたように思う。福原選手は、どちらかといえば、生まれながらにして美貌と才能を兼ね備えた“遠いあこがれ”の存在として注目されてきたのではなく、泣き虫ながらも、幼い頃から特訓を重ねて目標に近付いて行った“親戚の子”的な親しみやすい存在として、人気者になったのだ。そして、だからこそ、たくさんの人に愛され、応援されたのではないだろうか。
しかし、結婚後のハジけたWeiboの写真によって、その刷り込みが崩壊。「愛ちゃんがまさか、恋で周りが見えなくなったり、ブランドものをアピールしたり、自分を“可愛い”と思っていないとできない加工自撮りをアップしちゃう子だったなんて……」と、私たちは“見たくなかった一面”に直面させられ、イメージとのギャップに引いてしまったように思うのだ。
それは何となく、母親が妙に若作りしたファッションをしだしたときや、地味だった親戚の子が大学入学と同時に急に髪を染めだしたりしたときに、「似合わないからやめて……」と思わず顔が赤くなってしまう感覚にも似ている。「身内が分不相応な振る舞いをしているときに感じる恥」を、福原選手のSNSにも感じてしまい、それを“不快”と捉えると、人は一気にアンチ化してしまうのかもしれない。
また、結婚会見で卓球の現役続行を宣言しているのに、今のところSNSから伝わってくるのは、競技とは関係のないところでの自己顕示欲だけというのも、モヤモヤが募る大きな理由の1つと言えるだろう。ただこれらは全て、過去にメディアが作り上げた“泣き虫愛ちゃん”を信じすぎた、私たちの自業自得なのではないだろうか。
大江綾子(おおえ・あやこ)
日夜、テレビや週刊誌、芸能人のSNSなどをウォッチングしているライター。どこか癖のあるニオイを放つ女性タレントがお気に入り。