角田美代子から三浦和義まで、ムショの自殺はなぜ起こる?
覚せい剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。
■私もムショで死にたくなりました……
連休明け早々、府中刑務所で男性受刑者(府中に女子はいませんが)が自殺していたことがニュースになっていました。府中は昨年も自殺騒ぎがあったそうで、これは警備の問題というよりは「人数が多いから」やと思います。国内最大の刑務所で、2000人くらい収容されてますからね。
ちなみに地元の大阪刑務所は「西日本最大」なのですが、つい最近まで私は大阪の方が人数は多いと思ってました。
以前から書かせてもらってますが、刑務所や拘置所において、自殺と脱走は「絶対にあってはならないもの」です。もちろん「受刑者の人権」や「施設の近くの住民の皆さんへの迷惑」なんかを考えているわけではなく、幹部連中の「事故を起こしたら出世できない」という出世欲と、“事なかれ主義”だけやと思いますけどね。
そして、ホンマに死んでしまうことはあまりないのですが、自殺未遂騒動はけっこうあります。だいたいは首吊りですね。施設側も、自殺防止のためにタオルの使用は入浴時だけとか(房内ではハンカチサイズ)、警察に逮捕された時点で私服のパーカーやジャージのヒモ、ネクタイ、ベルトなどは没収とか、いろいろと規制しているのですが、それでも靴下やトレーナーの袖を首に巻いたり、ティッシュをのどに詰めたりと、いろいろ工夫(?)したはります。
私が中にいた時は、工場から針を持ち出して飲み込んだ人がいてました。工場では針やハサミなどの備品がなくなると、見つかるまで探し続けなくてはならず、普通なら持ち出せるはずがありません。一体、どうやって持ってきたのでしょうか? スゴいなあと思いました。
あとは、処方される薬を飲まずにためておいて一気に飲む方法や、便器に顔を突っ込むとかもありますが、どれもラクには死ねない方法ばっかりですね。
「なんでそこまでして……」と思われるでしょうが、塀の中には「人権」がまったくないんです。刑務官からも同房者からもいじめられて、すべてがイヤになります。それに、刑務作業のほかは食事とか入浴とかだけですから、とにかくヒマなんです。シャバなら、すぐに話し合って解決できるような問題も、相手が別の房にいる場合などは、何人も人を介していくうちに全然違う話になってしまいます。それで「そんなこと、聞いてへんわ」となって、またまたモメてしまうんですね。
私もそうでしたが、ほかに考えることもないので、工場で作業する時も含めて一日中このモメ事のことばかり考えてしまいます。こんなことでは、更生なんて程遠いですよね。モメ事についてでも考えられるうちはまだマシなのですが、しょうもない規則ばっかりですし、とにかく屈辱的なことばかりなので、マジで死にたくなりますよ。
私も最初に収監された時は、死にたいと思いました。いじめや処遇だけではなくて、自分自身について「家族や友達に迷惑をかけてしまった」とか、「これからどうしよう?」とか、いろいろ考えてしまうのです。ホンマにムショは行くところやないですねえ。