ドラマ『あなたのことはそれほど』、夫婦間のプライバシーは法で守られているの?
「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。
<今回の番組>
『あなたのことはそれほど』(TBS系/火曜日午後10時~)
<今回の疑問>
夫婦間のプライバシーは法律で守られているのか?
4月18日から放送開始したドラマ『あなたのことはそれほど』(TBS系)。波瑠演じる主人公・美都が学生時代に好きだった相手と再会し、お互い既婚の身でありながら不倫関係に溺れてゆくというストーリーだ。ドロドロそうな不倫関係が見どころだが、美都の夫・涼太役である東出昌大にも注目が集まっている。美都の不倫に気づきながらも、妻のことが好きすぎるゆえ徐々に狂気じみていくという役柄だ。仕事中の美都に連続でLINEを送ったり、美都が不倫相手の名を寝言で言っているのを聞いて以来、携帯を盗み見したりと、少しストーカー気質のある涼太だが、そもそも夫婦の間にプライバシーを守る法はあるのだろうか? アディーレ法律事務所の鳴海裕子弁護士に聞いた。
「夫婦間に特化して『○○法』という形で規定されているわけではありませんので、他人間に適用する通常の法律に当てはめて考えていくことになります。例えば、封がしてある信書を勝手に開封すれば『信書開封罪』(刑法133条)に該当する可能性があります。また、パスワード付きのクラウド上に置かれているメール等の情報に不正にアクセスして、内容を勝手に見ることなどは、不正アクセス禁止法(不正アクセス行為の禁止等に関する法律)に該当する可能性もあります。ただ、涼太のように、勝手に携帯電話の電話帳を見たりする程度では、これらには該当しません」
では、携帯のLINEメッセージを盗み見してもプライバシー侵害にはならないのだろうか?
「夫婦だからといって、携帯を盗み見して勝手にLINEの内容を読んだりする場合には、プライバシー権の侵害として、不法行為の慰謝料(民法709条)を請求する余地があるかもしれません。ただし、もともとプライバシー権は、私生活上の事柄をみだりに公開されないことを法的に保障すべく認められた権利ですので、個人的に見るだけの場合はプライバシー権の侵害ということは難しいです。また、携帯にロックをかけていない場合にも、そこまで情報を保護するつもりがなかったことが招いたものと考えられ、よって精神的苦痛が大きいとは言えず、慰謝料を請求することは難しいと思われます。もし、仮にプライバシー侵害に当たるとしても、配偶者に『疑うことやむなし』といえるほど浮気の疑いが濃い場合には、目的の正当性があるともいえますので、これもまた難しいでしょう」
ドラマは5月2日放送で第3話を迎え、涼太は美都に対しますます疑惑を深めてゆく。美都も、LINEの履歴を消去するくらいなら、携帯をロックすればいいのに……と思いつつ、徐々にバレてゆく展開から目が離せそうにない。
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