カルチャー
女性誌速攻レビュー]「GINGER」5月号

「GINGER」突然の“モテ特集”が迷走! 「職場で女を捨てるな」など紋切り型コメント連発

2017/04/23 17:00

 続いてメインのファッション企画「今年の春服には、もれなく“モテ”がついてきます」を見ていきましょう。これまでクリスマスもバレンタインも華麗にスルーし、“モテ”という文字を一切見ることができなかった「GINGER」が、満を持しての“モテ”特集。「GINGER」が提唱する“モテ”とは一体どのようなものなのでしょうか。

 誌面を読み進めていくと、「男性にだけチヤホヤされたいという意味ではなく、同性にも同じように受け入れられることが大前提」「誰からも好かれ、信頼されるための“好感度”」「出会う人すべてに好印象を持ってもらいたい」「男性にも女性にも受け入れられて、どんなシーンでも輝ける」といったコピーが散見されますが……え? それって要するに、巷の女性誌が何億光年にも渡り、こぞって特集してきた「全方位モテ」のことですよね……? え? 今さら!!??

 さらには、「すっぴん隠しのマスクをやめろ」(出版関係・38歳)「男ばかりの職場だからって、女を捨ててほしくない」(IT関係・36歳)「目尻がハネ上がったアイラインは恐怖」(映像関係・33歳)「シャツもワンピースも大好物(笑)」(29歳・医療関係)「ぶっちゃけ、スリット入りなら何でもOK」(28歳・飲食業)……などといった、一方的な男性からのコメントも掲載されており、既視感を否めません。“職場では女を捨てるな”って、某炎上CMかよ!

 その結果、「周囲の視線を意識しましょう」「ちょっとだけトレンドを取り入れた、おしゃれなコーディネートを心がけましょう」といった従来の「GINGER」のコーディネートに、男目線のアドバイスがプラスされただけの内容になっており、もともと教科書テイストだった誌面は、さらに情報量が増えてカオス状態になっています。

 周囲から浮かないTPOを守りつつ、最新の流行を取り入れたおしゃれな服を着て得られる「全方位モテ」が、「GINGER」女子にとっての“普通”なのでしょうか。“普通”のハードル高すぎます! 「GINGER」女子って、“周りの子たちよりも少しでいいから抜きん出たい”という、ちょっとだけ高いプライドを持っているのかもしれませんね。

 もちろん彼女たちが、ありのままの自分らしさに満足せず、試行錯誤しながら努力していることは認めます。しかし、それにしてもファッションの力を信じすぎでは。一体その信仰は、どこから来ているのでしょうか。さらに言えば「全方位モテ」する状態がかなったところで、結局のところ、彼女たちが何を目指しているのかがイマイチよくわかりませんでした。ほかの女性誌でよく見られるような恋愛ストーリーとともに着回しファッションを紹介するといった企画でもなかったため、男性と交際する上で発生する「告白」「デート」「ケンカ」「プロポーズ」などの具体的なシチュエーションのイメージは皆無。当然のことながら、その先につながる「結婚」というワードも登場しませんでした。

 これではまるで、妄想の中の非実在男子にモテようとしているだけ。同企画のコピーや男性コメントが、紋切り型ばかりだったのにも納得です。「GINGER」女子には、もしかしたら、自分の言動や将来等に対する根拠や具体性が乏しいのかもしれません。お洒落な服に身を包み、仕事に精を出して経済的に自立しているアラサーだけど、内面はぼんやりと夢見る少女のまま……そんな「GINGER」女子の一面が浮き彫りになりました。「GINGER」女子の迷走は、しばらく続きそうです。
(橘まり子)

最終更新:2017/04/24 13:50
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