手紙に描かれた彼氏の手形に手のひらを合わせて……元女囚が考える、ムショに足りないものとは?
覚せい剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。
■刑務所は「悪者を閉じ込めて懲らしめるため」にあるのではない
「ムショって、タイヘンなんやねえ。病気になってもなかなか医者に診てもらえへんし、懲役だけじゃなくて刑務官同士もイジメがあるなんて。ホンマ行きたないわー」
この連載を読んでくれた悪友の感想です。はいはい、その通りです。でもね、それだけでもないんです。まあ思えばバトルっぽいことを続けて書いてしまいましたので、「ムショのささやかな楽しみ編」に挑戦してみます。
そもそも刑務所とは、何のためにあるのでしょうか?
実は、「悪者を閉じ込めて懲らしめるため」ではないんですよ。もちろん実際はそうなんですけども、法律では、「改善更生の意欲の喚起」と「社会生活に適応する能力の育成」が処遇の原則とされています(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第30条)。難しいですけど、要するに、ムショとは反省してやり直すことと、そのための能力を育てるのがタテマエなんですね。
「あんな環境で、反省なんかできるかいな!」というのが私を含めてムショに行った人たちの正直な感想なわけですが、それでも「このままじゃあかんなあ」と冷静に思わせるようにはなっているんですね。
まず、塀の中に入ると、周囲の「危険物」がぐっと減ります。酒やタバコ、クスリ、クスリの売人やヤクザ、暴力を振るう夫や恋人、などなどですね。そして、その代わりに待っているのが、分刻みの規則正しい生活(とイジメ)なんです。
裁判が確定するまで過ごす拘置所は刑務所ほどではないですが、やっぱりかなり制限された生活です。最初は慣れるだけでタイヘンですが、そのうちに冷静になってきます。「アタシ、何やってんだろう」的な。寂しくても、つらくても、そこにいるしかないんです。それがわかってくると、またつらいんですね。